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日本のクリスマス商戦もまだまだ伸びしろアリ?!-あまり知られていないクリスマスマーケティング

年の瀬も近づきクリスマスももうすぐだ。最近の日本のクリスマスってどんな感じなのかなと思いニュース検索してみると、高級ホテルの特別宿泊プランだの、テーマパークでイルミを見ようだの、限定スイーツだの、プレゼントに欲しいものは高級ブランド品が上位を占めるだの何だのといった内容が続々引っかかった。どうやら、非日常的かつ豪華な気分を味わうというのが昨今の日本のクリスマスの過ごし方なのだろうか。少なくとも全国民が合意するかどうかは置いといて、商売する側はクリスマスをそういう風に提案している様子が伺える。

一方アメリカにおけるクリスマスは、完全に家族行事の日。街中のほとんどの商業施設が閉まり、家族親戚が一同に介して家の中で手作りの食事を食べ、クリスマスの朝にはお互いに贈りあったプレゼントを開けて楽しむ、という感じだ。

米世論調査会社ギャラップ社が1019人のアメリカ人を対象に行った11月の調査によると、9割強の人がクリスマスプレゼントを誰かに買う予定だと解答し、約720ドルをプレゼント購入に費やすと見込んでいた。

自分の子供や配偶者、自分の親に配偶者の親、さらに親戚の叔父さん叔母さん姪っ子に甥っ子と、あらゆる身内に何かをプレゼントしようとなると、やはり720ドルくらいあっという間に使ってしまうのかもしれない。

しかもプレゼントをあげる対象人数が多いという懸案もさることながら、別のポイントもあるのだ。

ちょっとアメリカ映画のクリスマスの家のシーンなどを思い出して欲しい。クリスマスツリーが飾ってあり、そのツリーの足元に大小さまざまな形のプレゼントの箱があるシーンを見たことがあるはずだと思う。さらに記憶をたどると、そのツリーのそばには暖炉があって、暖炉にはクリスマスっぽい靴下が飾ってあったような映像も思い出せるだろうか?アメリカの多くの家庭では、メインのプレゼントを木の下に置き、そのほかのちょっとしたプレゼントの数々をを靴下いっぱいに詰め込むという、なんと一人当たりにつきかなりの点数のプレゼントをあてがうのだ。

ちなみにこの靴下に詰めて送る細々したギフトのことを、Stocking Stuffers(ストッキング・スタッファーズ)という。直訳すると、靴下の詰め物、という意味合いだ。クリスマスの朝、まずは靴下に入ってるこれらギフトを次々と開けて楽しみのアクセルを加速させ、そしてメインのプレゼントを開けて楽しさを最高潮に高める……という、なんとも家族の温かい団欒っぷりが伝わってくるような風習なようだ。

我々日本人のように1人当たり1個のプレゼントを贈り合う身としては10点数以上も贈り合うということだけでも結構驚きなのだが、いったいどんなものが靴下の詰め物の主流なのかを知ると、さらにビックリしてしまうのだ。

ネットなどで「あなたのお気に入りのストッキング・スタッファーズは何?」的な検索をしてみると分かると思うが、多くの人が回答に挙げるものが

  • 歯磨き粉・歯ブラシ・フロス
  • 靴下・パンツなどの下着
  • 制汗剤
  • 髭剃り
  • リップクリーム・ローションなどの保湿グッズ
  • 乾電池
  • チョコレート・キャンディなどのお菓子

……といった、極めて日常的な消耗品・日用品なのだ。ま、使うこともなさそうなヘンなモノを詰められるくらいなら、確実に消耗できるモノのほうが使い勝手がよいという合理的な思考プロセスが背後にあるのかもしれないが、こんなに超日常的なものをクリスマスという特別な日にプレゼントしてもイイ、というのがびっくりだ。

この日用品だらけの靴下の詰め物、日本の消費財製造者もうまく乗ることができるのではないだろうか。日本のクリスマスときたらば、やれ高級ホテル宿泊だの外食だのブランド品だのイルミ鑑賞だの非日常感あふれる幻想路線に今のところはなっているのかもしれない。が、ここで歯磨き粉やリップクリームの製造者が「寒い冬でも身だしなみはキッチリ・潤いシットリで乗り切ろうね」という家庭的温かさで包まれたケア・パッケージ的なサブ・プレゼントとして靴下の詰め物を提案していくというのはどうだろうか。どうやらネットで見る限り、日本でも靴下のオーナメントを飾る人がチラホラ出てきてる様子。であれば、空っぽの靴下を飾るのでなく、せっかくなのだから何か実用的なプレゼントを詰めるよう提唱するのもアリなはず。これにより、クリスマス商戦とは何の絡みもなかったリップクリームや歯磨き粉が、急にクリスマスのタイミングで売上を伸ばすことが可能になる……かもしれない。

ギャラップ社調査のページ