雑談

インターネットによって無宗教化が進む?!

インターネットが人や社会にもたらす影響というのは様々ありますが、メリットの一つに個人が多様な情報に接するチャンスを飛躍的に増やした、という点があると思います。

インターネットが無かった時代には、ある事象について多角的に情報を収集して自身の考えを深めるためにはかなり手間がかかりました。そもそも”多角的な情報”なんて存在しなかったかもしれません。

今回は、そんなインターネットが普及していく過程で、無宗教な人を増やす原因になっているのでは?という研究をご紹介します。

シカゴ大学が1970年代から行っている社会調査のデータを分析した研究によって、アメリカにおいていずれの宗教も信仰していない人が増加している事がわかったそうです。

アメリカは人口のほとんどがキリスト教徒(プロテスタントが最も多い)であり、他の宗教を信仰する人も含めると、アメリカ人のほとんどが何らかの宗教を信仰していると言えます。ところが、1980年代〜2000年代にかけて、無宗教であると回答する人が数%から18%程度にまで増加しているそうです。

この原因について分析したオリン工科大学のアレン・ドーニー教授は、大学教育とインターネットの普及が大きく影響しているという説を発表しています。

以下は研究結果の概要からの引用です。

1.何らかの宗教を信仰する家庭で育てられた人は、自身も宗教を信仰する確率が89%に上がる。
2.収入が上位75%の人は、宗教を信仰する確率が91%に上がる。
3.(1,2に加えて)1970年に生まれた人と比較し、その10年後に生まれた人は、宗教を信仰する確率が89%に下がる。(若い人ほど無宗教の割合が高い)
4.(1,2に加えて)大学に行った人は、宗教を信仰する確率が87%に下がる。
5.(1,2に加えて)インターネットを週2時間以上利用する人は、宗教を信仰する確率が84%に下がる。

ドーニー教授はこれらがまだ仮説である事を前置きした上で、単純な相関を述べているのではなく、複雑な分析モデルを用いた研究によってこれらの要素が何らかの因果関係にあると主張しています。

この論文への反応を調べてみると、やはり様々な反論がなされているようです。特に多いのは「インターネットの利用と無宗教化の因果関係について説明が不十分」というもの。

これについてはドーニー教授が自身のブログで補足の説明をしておりますが、ご本人も「あくまで仮説」と述べているように、最終的に因果を証明するには至っていません。

ただ、引用の最初にある通り、宗教信仰が家庭環境に大きく影響することは間違いないでしょう。インターネットがそのような環境では得にくい多様な情報源となり、例えば家族とは異なる宗教を信仰したり、無宗教になったりする可能性は充分にあるように思えます。

一方で、インターネットが宗教心を育てる、という可能性もありますよね。筆者自身は無宗教なので想像でしかありませんが、インターネットによって同じ信仰を持つ人々の交流が活発になり、今まで以上に強い繋がりが持てる、という事もあるのでは無いでしょうか。

今回の研究だけではインターネットが宗教信仰にどんな影響があるのか断定することは出来ませんが、インターネットが人間社会に与える影響という意味で非常に興味深いテーマですね。

もし仮にインターネットが無宗教化の原因になるのだとすれば、インターネットは現代のバベルの塔なのかもしれませんが・・

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