データサイエンス

【体験記】データサイエンス数学ストラテジスト資格検定

皆さんは、データサイエンス数学ストラテジスト資格検定をご存知でしょうか。公益財団法人 日本数学検定協会から9/21に公開されました。今までにない数学の検定であり、データサイエンスの基盤となる数学スキル、リテラシーを学び、その理解度・習熟度を測定することで、データサイエンスにおける数学を扱う技能を認定する資格です。大きく分けて4つの分野が出題されています。

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参考:https://www.mathdatascience.jp/personal/

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レベルには[中級]と[上級]があります。

試験好き(笑)な私自身も、この革新的な資格試験にかなり興奮し、連休のいとまにこんなものも書きました。

agaroot.jp

さて、今回はデータサイエンス数学ストラテジストの試験を公開日当日に受験した方(Aさん)の体験記を共有します。実は、このAさんは、データサイエンスをGRIの講座で学び始めました。データサイエンスを勉強してきた経緯、何が得られたのか、それが現在のキャリアに役に立っているのか、というストーリーも語られています。これからデータサイエンスを学ばれる方に少しでも参考になれればと思います。

それでは、Aさんの受験体験記を修正なしで、以下引用いたします。

2021年9月21日にスタートしたデータサイエンス数学ストラテジスト検定の中級を、受付開始当日に受験しました。受験の動機、準備、試験の感想の順で、報告します。

●受験の動機

国内のメーカーにて研究・開発業務に従事している36歳です。国立の理工系大学院を修了しましたが、データサイエンスが専門分野ではないため、数学や情報科学の知識は、大学1~2年のレベルです。

日頃の業務でも、Excelを用いたデータ分析や、回帰分析などの基礎的な統計分析の経験はあっても、pythonや機械学習などのデータサイエンスの知識は、1~2年前までほとんどない状態でした。

昨今のデータサイエンス人材育成の流れの中、私の従事する会社でも、機械学習やインフォマティクスの活用が推進されて、人材育成が進んでいます。また、同業の他社でも、同じように(あるいはそれ以上に)データサイエンスが注目されていることを肌で感じています。

私自身は、会社の中では直接データサイエンスのプロジェクトに関わっているわけではありません。しかし、これらの社会の潮流を感じる中で、スキルアップとしてデータサイエンスの知識&技術を身に着けることが重要と思い、2年前よりGRIさんの講座にお世話になっています。実務経験といえるほどではありませんが、pythonも少しずつ使えるようになり、業務の中で、今まで時間をかけてやってきた仕事の効率化や自動化を、自分なりに試しているという状況です。

データサイエンスの資格としてはG検定の合格経験があります。しかし、G検定では数学の問題は数問だけであり、主に知識問題が中心となります。今後、データサイエンス人材として活躍できるようスキルアップをしようとしたとき、どのように数学やプログラミングの勉強をしていくべきか、と考えていました。

データサイエンスで用いられる数学の領域は、偏りがあります。よく使うものと、ほとんど使わないものがあります。高校や大学の数学の教科書を一通り勉強する、ということも考えましたが、ビジネスに生かせる数学力を身に着ける目的を考えると、それはやや遠回りなのではないか、やや効率が悪いのではないか、と思っていました。

そんな時に、日本数学検定協会から「データサイエンス数学ストラテジスト」検定が始まるというニュース記事を読み、まずこれに挑戦してみようと思いました。経歴上、大学1~2年までの数学は一度勉強したことがありますので、上級合格を目指すことにしました。

……が、上級の公式問題集を見てびっくり。結構忘れていて解けないのです。Web上での数学の試験というシステムにも慣れない中、いきなり上級にチャレンジしても、時間切れになって不合格になるのがオチではないか。それならば、まず中級を受験して、このような受験システムに慣れて、イメージトレーニングを使用ではないか、と思い、申し込み受付当日の中級受験を決断しました。

●これまでの勉強

GRIヤン講師のデータサイエンス基礎講座、G検定対策講座→2020年11月にG検定に合格。新シラバスが始まった2021年7月にも復習として再受験し、再度合格。

今回は、ストラテジスト検定の公式問題集を中級と上級を一通り勉強。

●試験の感想

試験開始当日ということで、試験の雰囲気やシステムについての事前の情報がなく、少し時間に余裕をもって受験の申し込みを行いました。受験の申し込みを行い、クレジット決済が完了すると、すぐに受験を開始できます。もちろん、日を改めて時間のある時に受験することもできました。

一旦試験を開始すると、途中で中断したり、やり直したりすることはできません。試験はwebブラウザ上で行いますので、事前にインターネットの通信環境に問題がないかどうか(例えば、自宅以外のイレギュラーな場所であれば、wi-fiや無線LANなどが安定しているか)をチェックし、PCの動作に不安定な点(充電は十分か?コンセントはあるか?裏で重たいプロセスが走っていないか?)がないかを確認することが重要です。お手洗いも済ませておきましょう。

準備が整ったと判断したら、自分のタイミングで「試験開始」ボタンをクリックすることで、試験を開始することができます。試験時間は90分で、経過時間と残り時間が画面上部に表示されていますので、時間を見ながら進めることができます。問題は30問で、基本的には問1から順に解いていきますが、難しかったり自信がなかったり、後回しにすることも可能です。ブックマーク機能もあり、制限時間の範囲内で何度でも戻ることができます。

公式サイトの案内や公式問題集によると、試験は「AI・データサイエンスを支える計算能力と数学的理論の理解」「機械学習・深層学習の数学的理論の理解」「アルゴリズム・プログラミングに必要な数学リテラシー」「ビジネスにおいて数学技能を活用する能力」の4つのジャンルがそれぞれ、3:1:1:1の割合で出題されると書かれています。実際の試験では、前半の半分くらいの問題は、学校の数学で習うような計算問題、方程式、関数の問題が多く、中盤にデータサイエンスの知識が求められる問題、終盤に具体的な事例に基づく応用問題があり、だいたい公式情報のジャンル順になっているように感じました。しかし、他の受験者も同じ問題順かはわかりませんし、4つのジャンルは独立ではなく、重複する部分も多いため、「この問題はどのジャンルに対応するのか」と考えるのは、あまり意味がないように感じました。

基本的な数学の問題としては、四則演算や方程式が5問程度、割合・比例・一次関数・二次関数などの関数に関する問題が5問程度で、これらの中には中学生の知識で解けるものが結構ありました。しかし、他には、三角関数や行列など高校の知識が必要なものも数問ありました。規則性を見つける問題は、このような問題に慣れておくことが、早く解くカギだと思いました。

統計学の知識として、平均値、中央値、標準偏差、回帰直線、相関などを知っておく必要がありました。また、機械学習の前処理技術として用いられる、正規化や標準化についても出題されました。これらは、すべてを手計算で求めようとすると計算ミスの原因になるので、Excelなどの表計算ソフトを別途立ち上げて置き、随時活用できるようにしておくことがおすすめです。また、関数を使いこなして、平均などの値を瞬時に計算できるようにしておくと、早く解けると思います。

機械学習の知識として、ROC曲線、畳み込み演算、サポートベクトルマシンの分離境界線、ユークリッド距離に関する出題がありました。定義式や用語の意味は問題文に書かれているため、知らなくても回答は可能だと思いますが、理解するのに時間を要してしまうので、事前に知識を持っておくことが確実に得点するためには重要でしょう。

ジャンル④の「ビジネスにおいて数学技能を活用する能力」でしょうか、最後に、比較的具体的なシーンを想定した応用問題が連続して出題されました。中学~高校までの知識で解ける内容ということで、割合や比率に関する応用問題がほとんどでした。小学校の算数で習った「速さ、時間、距離」のいわゆる「ハジキ式」のような考え方をいかに柔軟に応用できるかが、試されていました。

試験時間は90分間でしたが、個人的な事情により別のスケジュールがあったため、30分間で一通り説いた後、見直しをせずに「試験終了」ボタンを押して、退室しました。

解けなかった問題はなかったので、それなりに自信を持っていたつもりでしたが、なんと5問も間違えていました。間違いの原因を分析したところ、下記の3点があげられました。受験する方は、お気を付けください。

  • 問題文のデータをExcelに転記するときの入力ミス。
  • 単純な計算ミス……まさかの13+9=20、3(a+3)2=3a2+6a+9
  • 日頃、計算をExcelに任せてしまっているツケでしょうか、単純な計算ミスが多発しました。
  • 焦りによる問題の勘違い……「~%になった」と「~%増えた」は違いますよね……読み違えました。

また、web試験ということで、問題が画面上に表示され、計算は手元の紙で行う、というパターンは、慣れていないとなかなか集中できないものでした。私のように、本&紙で勉強した世代にとっては、目や手先が、画面から紙へ、その後マウスでクリック……とあちらこちらに移動しなければならずちょっと大変。若い世代なら難なくこなせるのでしょうか。

●試験を終えて

この度、数学ストラテジスト検定の上級合格を目指す1stステップとして、試験形式になれる目的もかねて中級を受験しました。解けない問題はなく、制限時間にも余裕をもって解き終えることができました。しかし、久々の手計算による計算ミスなど、課題が見つかりました。

今後は、上級の合格に向けた数学の勉強を進め、今回のようなミスがないように、また、ちょっとミスをしたとしても合格できるような実力を身に着けていきたいと思います。

記事担当:ヤン ジャクリン(分析官・講師)

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データ分析官・データサイエンス講座の講師