雑談

捨てる「紙」あれば拾う神あり

日本のスーパーやコンビニで会計を済ませると、そのままレシートをすぐに捨てられるよう、レジの横にはレシート捨て専用の小さなゴミ箱が備えてある。
 
このように日本では屁のツッパリにもならない扱いのレシートだが、アメリカではこれらのレシートをスマホで撮影してお小遣い稼ぎができるという、なんともおいしいアプリが昨年の夏から出回ってるのをご存知だろうか?

Receipt_Hog
 
Receipt Hog(「レシート・ホグ」Hogはブタ、イノシシの意味から転じて、ガツガツ貪り食うの意味にもなる)と呼ばれるこのアプリの仕組みは、いたって簡単。まずは自分のスマホにこのアプリをダウンロードする。そしてスーパーやコンビニ、ペットショップなどで日用品の買い物をするたびに、もらったレシートを撮影し、それをアップロードして「コイン」を収集する。このコインはいずれ一定額に達すると、現金に換金することができるのだ。今現在の換算は、コイン1000個で5ドル、1800個で10ドル、3200個で20ドルと相成っている。
 
なおかつコインの収集は、撮影したレシートのアップロード以外でも可能となっている。たとえば、「今回購入したジュースは、衝動買いですか?それとも来店前から計画してましたか?」などの購入商品に関わるアンケートに答えることでもコインをもらえる。
 
また、アップロードやアンケート回答の回数が多いほど、アプリの中で「レベルアップ」が発生し、1枚のレシート当たりで付与されるコイン数も増えて、加速度的にコイン収集ができる。たとえば、初期レベルにおいてもらえるコインは、1枚のレシート当たり10個だが、最大レベルに達すると1枚当たり25個もらえるようになる。つまり、このアプリに貢献する頻度と深度が高まるほどに、換金率も高まるというわけだ。
 
ゲーム感覚のアプリで小遣い稼ぎができるReceipt Hog、人気は口コミで広まり、リリースから1年強経ったいま、1日平均4万枚のレシートが計100万人以上の消費者によってアップロードされているという。
 
ここまで聞くと、日用品購買者である我々にはとてもオイシイ話だけど、お金を払ってまでこんなことして一体他に誰が得をするのか?と不思議に思うだろう。そんなナゾに応えるかのごとく、数週間前、このアプリの開発元から、新サービスInfoScout.coが発表された。

InfoScout
 
この新サービスは端的に言うならば、特定の商品別または小売店別に消費者の購買行動を細かくデータ分析しダッシュボード化したようなものだ。もちろんこれらのデータ元は、過去1年強、粛々とアプリユーザから収集してきたレシートの詳細情報、追加アンケートの回答、そしてユーザの性別年齢などの登録情報である。
 
現在ホームページには乾電池メーカーDuracellの購買分析がデモ例として掲載されている。これを見ると分かるように、どういう学歴、年収、人種、性別、年齢層の人たちが、どういう店舗で、何曜日の何時ごろに、他にどんな商品と一緒に当社乾電池を買ったかなどが一目瞭然で分かるようになっている。また、これら定量的に取れるデータ分析のみならず、レシートの字面からだけでは分からないようなアンケート回答「このブランドを初めから買う予定でしたか?それとも目的のブランドが品切れで仕方なく買いましたか?」などのインサイトも併せて見ることができる。
 
いまのところ我々のような一般人でさえ、LinkedInのアカウントを持っていれば、最大5つの商品ブランドないしは小売店のデータ分析結果を閲覧可能だ。ただこの開発元が最終的に目指すところは、このように小出しで無料一般公開することではなく、企業相手のデータ販売だ。実際、すでにクラフト、P&G、ネスレ、ペプシなどの大手消費財ブランドメーカー数社と契約を交わしている。
 
従来の手法とはかなり違って、かなり画期的な消費者インサイトの登場と映るのだが、今後の展望も色々気になる。まずは、単純に小銭稼ぎ目的で登録してたユーザたちが、こんな風に営利目的で利用されてたと知ってユーザ離れが起き、ひいてはデータ収集が困難になったりしないかどうか。または逆に、似たようなサービス提供者が次々と現れ競争が激化し、データ分散が起きて分析の質が低下しないかとか。他には、小銭稼ぎに興味のない富裕層やスマホを使いこなせない中高年層のデータもきちんとまんべんなく反映されてるのかどうか、などなど、新しいサービス台頭なだけに、今後の発展に注目したい。
 

InfoScout.Coのデモページ:
http://infoscout.co/demo

Receipt Hogダウンロードページ: