近頃、可視化分析の研修ではTableauと他のBIツールの比較のお話を依頼されているので、記事にまとめてみた。
世の中に数多く存在するBIツールたちには、共通の目的がある。BI=Business Intelligenceという名前の通り、ビジネスに役に立つ知恵・知見を引き出すことが目的である。社内・外部に散らかっているさまざまな種類のデータを統括管理し、分析に使いやすくしてくれる。
迅速かつ的確な経営判断を実現するためには、より多くの時間を施策や思考に費やす必要がある。よって、データ分析の労力を最小限に抑えるのがポイントである。
BIツールの導入意義
- 効率性・スピード(優れた操作性、レポーティングの自動化)
- データドリブンな意思決定を支援
主にはこの二つである。
システムを横断してあらゆるデータを統合できる上に、複数の軸・角度からビジネスを俯瞰できるため、データそのものの中から法則・インサイトを引き出しやすくなるのである。
- 表現能力が高い
インタラクティブなダッシュボードのおかげで見る人の視覚・直感に訴えることができ、思考過程をストーリーで伝えやすい。
- 分析の属人化防止、労力の低減
専門スキルがなくとも、データの準備と分析を実施し情報を活用できる。複数人で分析機能を活用でき、分析結果も共有しやすい。
Tableauの特徴と他のBIツールの比較
Tableauの特徴
Tableauって何?という人に向けて説明しよう。Tableauとは「可視化分析を行うツールの1種であり、それを用いてダッシュボードを作れる」というものである。
しかしメインの利点はダッシュボードが出来上がることではない。Tableauを使う人も、または見る人も、触れば触るほどデータからインサイトを引き出せることこそが、このツールの最大の利点といえるのではないだろうか。Tableauというツールの特徴をより詳しく書くなら以下のようになる。(一部は他のBIツールと共通)
- 一般的に言われているのは、誰にでも使いやすい・比較的短時間でそこそこ使える状態になるまで学べること。つまり、習得に費やすコストを抑えられること。早く施策に役に立ってほしいという思いで導入したのに、使えるまでに長い時間を費やすようでは元も子もない。これは、使いやすい・分かりやすいインターフェイスを持っていることにも起因する。
- もう1つは、インパクトのある可視化・分析ができること。TableauはBIツールの中でも優れたデータ表現力、豊富な機能を実装可能な部類であると言われている。実装する側のみならず、閲覧する側も直感的な操作性から恩恵を受けている。
- 最後に、これは分析専門家や可視化分析を推進する側からの観点ではあるが、Tableauは何よりも「有名」であり、「ビジュアル分析のゴールドスタンダード」 のとして売りやすく、お客さんにもおすすめしやすい。
もちろんデメリットもある。日本語版ヘルプの質などである。マニュアル系の日本語訳が不自然、日本語化された学習用動画が少ないという部分は、改善すべき点である。コミュニティも、英語が苦手な方にとっては使いづらいことが多い。別件で、高度な機能を自ら実装できるとはいえ、スキルが不十分なユーザが不適切な使い方をすると、知見を得るまで遅く感じてしまう。また、高度なビジュアルや表現を実行しようものならばドツボにはまりやすく……思い通りのグラフが作れないまま長いこと悩んでしまい、ついつい時間を湯水のように使ってしまうのである(私もそう)。つまり、Tableauは特別なものだと思わずに、あくまでも開発自由度がやや高いBIツールの1種であると受け止めるべきである。
他のBIツールの特徴は?
では、上記で述べた特徴のうちどれが他のBIツールとの共通点なのか。そこで、Tableauを他のBIツール数種と比較してみることにした。GRIでは従来よりTableauをメインに知見を蓄えてきているので、そのほかのツールを使用したことがある人の声や、ウェブ上の情報を参考にさせていただいた。
今回比較するのは、Power BI(Microsoft)、DOMO、Motion Boardである。これらのツールの間の共通点は、BIツールである点と、それゆえに比較的簡単な操作で分析と可視化(ダッシュボード作成)が出来る点である。それ以外は少しずつ異なってくるわけだが、一例として以下のものがある。
- ターゲットユーザーの範囲
- 使い勝手・機能・表現力(ユーザーの背景、相性にも依存)
- 導入・運用の価格帯
- 導入実績 / 知名度 / コミュニティの大きさ
- サポート・サービス
Tableauは先述のように、一般的に使いやすいこと、何がどこにあるかわかりやすいので柔軟に計算法・表現をカスタマイズできること、美しいダッシュボードで大きなインパクトを出しやすいこと、作る側も見る側も直感的に操作しやすいこと、以上のことが特徴と言われている。
Power BI
Power BI もTableauと並んで知名度が高く、Microsoft製品ならではの明瞭さ・安心感があり──特にExcelユーザーが馴染みやすく──まるで、大容量データを扱えるExcelの感覚で使える。そして大きなメリットとしては、安価で手軽に始めやすいことである( “wowed within five minutes”)。抜群にお手頃な利用料のおかげで、 BIツールの入口として社内決裁が取りやすい。特徴的な機能としては、自然言語クエリでチャートが返されることと、データソースからの定期更新が可能であることが挙げられる。ただし(特に無料版は)、データ容量は少な目なのでビッグデータ向けとは言えない。
DOMO
500種類程度の豊富なデータソースに対応ができ、可視化以外にデータの統合・集約・加工機能がオールインワンに統括されている。使い勝手や管理性上の利便性の多いクラウド型BIツールとして、ETLなどのインテグレーションに必要な技術を持っていないような、一般のビジネスユーザーにも使いやすいツールと言えるでしょう。また、統合基盤はトータルで導入コストが低いこと(データウエアハウスやETLのインテグレーション不要)などが特徴としてあげられる。
Motion Board
Excelと連動しやすく、円滑な業務を支援する機能が充実している。例えば、Excelで入力・加工して更新すると、Motion Board上でもそれに倣って自動で連動、更新される。そのうえ、Excel・PPT・PDFへの出力、自動メール配信機能、業務・業種に合わせた数々のテンプレートなどなど、多くの機能が内蔵されてる。一方で、高度な機能が作り込まれているということもあって(?)、月額料金が割高の部類である。
更に俯瞰的にマッピングすると(以下は「どちらかというと、的な話」)以下の図にまとめられる。
結局、社内のリソースと何を重視するかに依存し……高度な視覚化、見栄え、計算機能、カスタマイズの柔軟性を選ぶならTableau、「誰でも使える」操作性を重視なら、Power BI、 DOMO、 MotionBoardなどの掲示板らしいツールが良いと言えるでしょう。
価格帯
導入に関して誰もが気になる利用料金は以下となる。DOMOのみ非公開なので省略。
作者:アナリティクスチーム ・ヤン