雑談

竹田いさみ著「世界史をつくった海賊」

「海賊」という単語に何となく興味を覚えて手に取った1冊でしたが、「人間が持つ欲」について深く深く考えさせられた本をご紹介です。

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)
竹田 いさみ
筑摩書房
売り上げランキング: 30,718

今まで「海賊」についての知識と言えば、映画パイレーツオブカリビアンを見たことやディズニーランドのカリブの海賊を体験したくらい。

しかも両方とも「何となく」の体験であり、内容もそれほどしっかりと覚えていないのが正直な所です。

そんな私がひょんなことから「世界史をつくった海賊(竹田いさみ著)」という本を手に取り、その歴史に圧倒され、「人間が持つ欲」の強さ・残酷さについて触れたように思います。

16世紀頃、二流国家からの脱却をめざし、現金収入を得る為に「海賊」を利用し、略奪、奴隷、植民地、それらを元に貿易事業を進めてきたイギリス。

見事と言ってよいか分かりませんが、結果として大きな収入を得たイギリスはその礎の上に18世紀から始まる「産業革命」が始まり現在のイギリスという国が成り立ってきます。

それを進めてきたのがエリザベス女王であり、方法として「海賊」を合法化、正当化したことによるものでした。

本書は基本的にこのような文脈に沿って詳細が記載されて行きます。

しかし、イギリスだけでなく四方を海に囲まれた日本においても、倭寇などに代表されるように海賊行為は行われていました。

本書にも出てきますが、ポルトガル・スペインなども国を挙げての海賊行為からの覇権争いを繰り返します。

生き残るためには何をやってもいい、ということではもちろんありませんが、人はどんなことでも正当化し豊かになろう、生存しようとする生き物であることがよく伝わってくる本です。

翻って振り返ってみると悪事や失敗を正当化し、自分を守る、生き残る、ということについていえば家庭・会社・友人との関わりの中で小さなことも含め、自分や周りでもよく起きている現象のように思います。

「悪いこと」とされていることを合法化、正当化し豊かになろうとするということに関して言えば過去・現在に行われている戦争も基本的には同じことなんではないか、人間は歴史から学んでいるわけではなく、同じことを形を変えて繰り返しているのではないか、と感じました。

それほどまでに豊かになりたい、勝ちたい、言い換えれば「生き残りたい」という生命が持っているのであろう欲の強さの表れでしょう。

また、もし自分がこの本に出てくるその場にいた場合、どういった行動を取るだろうか想像してみると、自分が生き残る為には、同じような行動を取ってしまいそうで怖くも感じます。

海賊行為、戦争など、それらを「悪」として決めることやバッシングするのは簡単ではありますが「人間とはそういう生き物なんだ」と定義・理解し、その上でどういった社会生活ができるのかを考えることがとても大事なんだと、そう思わせる本でもありました。

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)
竹田 いさみ
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