雑談

都築 響一「TOKYO STYLE」

現代生活図鑑というサービスを作るにあたって、影響を受けた本を3つ上げろ、と言われたら間違いなくその一つにこの本を取り上げると思います。

今日はそんな本のご紹介です。

TOKYO STYLE (ちくま文庫)
TOKYO STYLE (ちくま文庫)

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都築 響一
筑摩書房
売り上げランキング: 10,884

冒頭、著者の都築響一さんはこう書いています。

飽きるほどたくさんの「日本の空間」を扱った印刷物が本屋に並んでいる。でも、どれからも、そこに実際に暮らす人間たちの気配は感じられない。なぜならそれは、人間の生きる場所としての空間の記録ではなくて、建築家なり写真家なりの作品、あるいは商品の巧妙なプレゼンテーションにすぎないからだ。更に言えば、そんな写真のように住んでいる人間がまずいないからだ。
豪華な写真集や分厚い雑誌に出てくるようなインテリアに、いったい僕らのうちの何人が暮らしているだろう。
(略)
僕らが実際に住み、生活する本当の「トウキョウ・スタイル」とはこんなものだと見せたくて、僕はこの本を作った。

この本を初めて見た時のインパクトは今でも忘れられません。

この本が世に出たのは今から20年くらい前。
私がこの本を知ったのは確か10年くらい前だったと思います。

従来のメディアを通して自分の目に入ってくる、他の人のライフスタイルというのは、自分が住んでいる世界とは全く別物のものでした。

キレイで大きな家・部屋、毎日がパーティじゃないかと思える豪華な食事。

一部の人だけだと頭で分かっていても、何となく劣等感を感じていたのを覚えています。
どうして、そういう家の子供に産まれなかったんだ、なんて本気で思った事もありました(笑)

ただ、その後もメディアから流れてくる空間に、ずーっと違和感を感じてもいました。

どうしてもリアリティを感じられない、どこか演出されたものではないか、という違和感。
※今は各SNSから流れてくる情報で埋め尽くされるフィードやウォールも似たような感覚を覚える事があります。

その後、そのような感情も忘れ、大学を卒業しマーケティングリサーチの仕事に長く携わることになり、たくさんのアンケートの回答結果やグループインタビューでヒアリングしたものから出てくる結果へ触れる事になります。

そこで再び感じる違和感。

それは昔、メディアから流れてくる日本人の生活に対して感じている違和感と同じようなものでした。

「アンケート回答時やグルインでの発言はその人の本当のことを表しているのだろうか。」という違和感。

そこで、現代生活図鑑というサービスの元になるアイデアが生まれました。

【目的】

  • リアリティを持って「人」を知る

【実現案のためのアイデア】

  • その人を構成しているもの(買ったもの、趣味のもの、考え方が分かるもの)が一番集まっているのは部屋だ(という仮説)
  • 取材時に人が一番リラックスして、本当の自分のことを話してくれるのは、その人がいつも生活している本人の部屋だ(という仮説)

【手段】

  • 現代に生きる様々な生活者が住む部屋を訪問させていただき、その場で部屋の中とご本人へ取材を行う
  • その結果をレポートとして配信する

何度もブレストを行い、このような形に落ち着きました。
「部屋と取材を通して、人を知る」というコンセプトができました。

どのような取材にするか、どのような写真があるとよいか、どのような人達に取材にいくか、など「TOKYO STYLE」という本からは多くのヒントをもらいました。

「TOKYO STYLE」は従来のメディアに対しての問題提起と具体的な回答を出してくれました。
まだまだなサービスですが、現代生活図鑑も「従来のマーケティングリサーチ」の問題点に対して、(大ボラ吹きと言われるかもしれないけど)一つの具体的な回答だという意気込みでやっています。

著者の都築 響一さんはその後も意欲的な作品をたくさんたくさん出されています。

今は「ROADSIDERS’ weekly」という有料メルマガで毎週ものすごく濃密な情報を出されています。

TOKYO STYLE (ちくま文庫)
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