導入事例

データ・ドリブン・マーケティングって、なに?[第1回]

1.広告業としてのデータ・ドリブン・マーケティング

 

貴方は、広告業(この言葉自体も捨て去られるべきでしょうが)を生業として企業活動をしているとします。その中で、貴方がマーケティング担当者として「データ・ドリブン・マーケティング(データ志向のマーケティング,Data-Driven Marketing)」をどのように捉えていけばよいのかを考える、というのが今回のテーマです。

古くからマーケティング活動にはデータが使われてきました。世論調査データ、地域ごとの販売実績データ、視聴率データなどです。企業におけるマーケティング担当者(以下、担当者とします)は、より小さな予算でより大きな効果をあげることを日々求められ、投下した広告費の正当性の説明に苦労してきました。そのためにも、彼らは必要なデータ類を集め、分析・加工し、説明用資料を作り、ときには過剰とも思えるプレゼンテーションを繰り返してきたのがこれまでだったはずです。

しかしながら、これからは違います。貴方に必要なデータはほぼリアルタイムに集まり、分析加工は自動的に済み、説明用資料も不要になります。かつての担当者が虚勢を張ってプレゼンテーションをしなくてもいい時代になると思います(あえて言わせていただきます!)。

図表1. データ・ドリブン・マーケティングを推進する前(これまで)と推進した後(これから)の違い

これだけ聞くと、貴方にとってはデータ・ドリブン・マーケティングの導入に成功すると、説明する作業が簡素化され、自動化され、ラクになるのだと思うかもしれません。確かに、貴方はデータ集めに苦労しなくなり、気難しい専門家に分析を依頼しなくても済み、美しい資料作りに膨大な時間を割かなくてもよくなるかもしれません。データ・ドリブン・マーケティングを取り入れる企業は、適切なマーケティング指標をローコストで活用できるという「生産性の向上」の成果は確実に得られます。データを扱う作業コストはどんどん簡素化・低コスト化されていきます。そうなると、これからのマーケティング担当者、つまり貴方に求められるのは、説明すること以上に「次に何をするか?」というマーケティング計画の構想力や企画力になります。

このように考えると、データ・ドリブン・マーケティングの目的はマーケティング指標をつくることだけではありません。何の(what)ための誰の(who)ための広告なのか、どのような(How to)クリエイティブや手段による広告なのか、いくら(How much)の費用を賭けてもよい広告なのか、どのタイミング(When)が良いのか等、そのすべてにおいて精度をあげていくことができる方法論です。これらのことは後述するとして、まずは一般的にどのような「マーケティング指標」が必要とされているかを見ていきましょう。

※JAAA誌9月号既掲載分を一部改編