先日ショッピングモールをブラブラしていたところ、Athleta(アスレタ)という店で異常事態に遭遇した。
Athleta(アスレタ)は、日本でもお馴染みのGap(ギャップ)、Banana Republic(バナナ・リパブリック)、Old Navy(オールド・ネイビー)などを展開するGap社傘下にある、女性用スポーツウェア専門ブランド。値段は少し高めだけども、色鮮やかで流行を取り入れたデザインの水着、ヨガウェア、ランニングウェアなどを取り揃えている。前に触れたLululemon(ルルレモン)のライバルとなる存在のブランドだ。
店頭の写真をいくつか撮ってみたが、この尋常でない様子、お分かりいただけるだろうか?!
マネキンの筋肉の盛りっぷり、お気づきいただけるだろうか?この二の腕の力こぶ、子持ちシシャモ並みのふくらはぎ、パッツンパッツンの太もも。こんなムキムキの女性マネキンはこれまで見たことがない。
普通、女性マネキンといえば、まさに女性モデルのように、スラっと背が高くてひたすら細いのが典型だ。不健康なくらい細くデザインされているのは、店頭で洋服の着せ替えがしやすいようになのか、ファッションモデルみたいに細い線に着せて見映えを良くするためかは分からないが、大概足も腕も胴体もかなり細身に仕上がっている。
そんな細身の女性マネキンに見慣れていたところ、ムキムキの女性マネキンに出くわしたのでビックリしたわけだ。
マネキンを店頭に置くことのビジネス効果、というのは、数字やデータが手元に無くお見せ出来なくて申し訳ないが、おそらくこんな感じだろう。
- 客足誘導効果:
ハンガーに商品を吊るしてるだけよりは、身体を模倣したマネキンに商品を着せて店頭に置いたほうが、お客さんに興味を持ってもらい店内に入ってもらいやすい - クロスセル効果、客単価向上効果:
マネキンが着てる上着だけでなく、オシャレに組み合わせて着せているパンツやアクセサリーも、合わせて気に入ってもらって買ってもらえる可能性が高まる - 回転率向上効果:
「この上着欲しいけど、ほかにナニを合わせて着たらよいんだろう?」という向きのお客さんに、上記クロスセルにあるようにマネキンの着こなしを見て気に入ってもらえれば、試着室であれこれ組み合わせて着てみたり試行錯誤する時間を省け、短時間でレジに直行してもらえる
そこにもってきて、テンプレートど真ん中みたいなノッペリ細身のマネキンを使うよりも、自店ブランドがターゲットとする顧客層を反映した体型のマネキンを使用することで、より確実に狙いの客層を店内に誘導しよう、というのがこのAthletaのムキムキマネキンの作戦なのだろう。
どうやらAthletaのマネキンは、オリンピックに向けて訓練中の本物の女性アスリートDanielle Halversonさんの身体を元にデザインされたらしい。Danielleさんが走ったり飛び跳ねたりする様子を3Dスキャンし、彫刻家がそれを筋肉の腱1本1本のレベルまで再現した型を元にムキムキマネキンは作成されたとか。
Athletaマネキンの開発製作を請け負ったマネキン会社Fusion Specialtiesによると、こんなカスタマイズのマネキンを作るとなると、そもそもの開発デザイン費に1万5千ドル近くかかるし、またマネキン1体の作成に千ドル近くかかると言う。全国に約100店舗を展開するAthletaが1店舗に約10体のムキムキマネキンを配置するとしてざっと換算すると、筋肉質のマネキン導入だけで100万ドル以上も費やしてることになる。
そんな強烈なムキムキマネキン導入費用に見合った利益や効果が出てるのかは図り知れない。が、ひとつだけ言えるのは、約1年前から中距離ランニングを始めたせいでふくらはぎの子持ちししゃも化が気になっていた私の興味をマネキンひとつでここまで惹き付けたということは、同じように筋肉質の身体が気になってる他の多くの女性の興味を惹きつけてることも確かなはず。
アメリカのように多種多様な人々が暮らす国では、そんな風に従来の細身マネキン一本槍では客寄せしにくいと感じてるのはどうやらAthletaだけではない様子。ほかにもこんな、多様っぷりを示すマネキンたちが伺える。
例えばこちらのお店は通常サイズとプラスサイズを置いているので、ぽっちゃり体型の女性マネキンが細身マネキンの横に展示。
ヒスパニックか黒人かちょっと区別がつかないけど、明らかに白人じゃない客層を狙ってると伺える店のマネキン。
日本でもお馴染みOld Navyのマネキンは、白人、アジア人、黒人、その他有色人種を模倣。