データサイエンス

今後、バイオインフォマティクスが流行ると思った理由

私が最近興味を持っている研究分野に「バイオインフォマティクス」というものがあります。この分野は生命を語る上で欠かせない DNA をデータとして扱い解析するもので、コロナウイルスが世間を騒がさせている今、かなり注目されています。この記事では、そんなバイオインフォマティクスを紹介していきたいと思います。

バイオインフォマティクスとは

バイオインフォマティクスは「生命現象をコンピュータを用いた情報理論で解明する」研究分野です。生命科学実験法といえば、昔は電気泳動やハイブリダイゼーション法のような対象物を染色して可視化観察をするものがほとんどでしたが、現代では次世代シーケンサーの発展によってDNA や RNA などのゲノムを配列データとして詳細にかつ大量に読み取ることが可能になりました。そのことにより、人の手でそれらの情報を処理するのが難しくなり統計学や機械学習の手法が使われるようになりました。このように、「バイオロジー(生命科学)」と「インフォマティクス(情報理論)」が融合したものがバイオインフォマティクスです。

バイオインフォマティクスでできること(できるようになりそうなこと)

1.病理、疾病の原因の解明
生物はそれぞれ個別に違うDNA をもっています。それが顔の違いや髪質の違いといった性質に現れ、多様性を生みます。これらの性質は生命活動を維持するうえで関係のない部分がほとんどですが、その中には命に関わるような致命的なものもあります(有名なものでいえばダウン症です)。このように、生命が誕生した時点で発症してしまう先天性疾患の原因を解明するためにバイオインフォマティクスが有力な武器になります。先天性疾患を完治させるのは現在の技術では難しいですが、早期発見することで病気の進行を遅らせたり合併症の予防をすることができます。

2.適切な治療の提案
私たちが病気にかかったとき、病院に行き、医者の診察を受けて、医者から処方箋をもらい、薬局で薬を受け取り、薬を飲んで治療します。この薬の種類は診察した医者が判断しますが、この判断基準は症状に対して普遍的に有効であるものを採用しています。つまり、その薬を飲んで本当に効果があるかどうかは実際に薬を飲まないと分かりません(とはいえ、お医者さんの判断は正確だと思うので信用してください)。そのような問題に対処するためにプレシジョン・メディシン(精密医療、個別化医療)という考え方が提案されました。これは遺伝子・環境・生活習慣などの個人の違いを反映した治療を行うことで、現在は必要なデータを収集している段階です。バイオインフォマティクスはここの遺伝子の違いを探索する際に必須となる技術です。

3.食料の生産効率の上昇
小麦や米の作物を効率よく生産するために、これまでは遺伝子組み換えの技術が用いられてきました。遺伝子組み換えのメリットとして、病気に強くなる・農薬に強くなる・収穫量が増えるといったことがあるのに対して、デメリットとして自然の生態系を破壊する・食べた人の健康を害してしまう可能性があるということが挙げられています。このデメリットの原因が外部遺伝子の挿入によるもので、現在国内での遺伝子組み換え食品の生産は禁止されています。そこで、遺伝子組み換えの代案としてゲノム編集が注目されています。ゲノム編集は外部遺伝子を必要とせず、自然発生的に生じる変化を利用して品種改良する技術で既に国でも一部の使用が認められています。しかし、ゲノム編集で適切な効果を生み出すためには複雑な遺伝子ネットワークを理解する必要があり、そこにバイオインフォマティクスが必要です。
また、農作物に限らず牛や魚などの畜産や漁業でも同様の目的での品種改良が可能です。

バイオインフォマティクスでできそうなことは他にも色々あります。特に、私たちが健康に生活していくために力を発揮する場面が多そうです。データに携わる人の一人として、医療技術や一次産業系の仕組みを改善するために積極的に利用していきたいと思いました。最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回ご紹介した内容に限らず、遺伝子配列データ含む医療データ(レセプトデータや画像データ)で何か明らかにしたい!というご要望がございましたら弊社のwebページから申し込みをお願いいたします。

 

Yasui
アナリティクス&デベロップメント所属 特技はPCR