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写真の著作権を考えよう 〜絵の複製はNG・彫刻の複製はOK?〜

この記事では著作物として認められるための条件、特に写真にフォーカスを当てます。

執筆者のオリジナル著作権クイズ

まず、以下の質問について皆さん答えてみましょう。

日本の著作権法に基づいて、著作物として保護されるための条件として、最も適切な選択肢を1つ選んでください。

  1. 自らの感情を書き下ろしたエッセイ
  2. 防犯カメラから取得した写真
  3. 発明につながる独特なアイデア
  4. 「2 + 3 = 5」と記述されているPythonの計算用コード

 

【解答・解説】

選択肢1が正しい解答です。

他の選択肢2〜4は著作権が発生する確率が低いと思われます。その理由を見ていきましょう。

大前提として、著作物であるための条件は以下となります(著作権法の第 2 条第 1 項第 1 号)

  • 思想又は感情を表現したもの表現物であること
  • 創作的に表現した(創作性を有する)ものであること
  • 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する表現であること

他に知っておくべきこととしては、著作権は、人(自然人、AIは対象外)が表現物を創作した時点で、自動的に発生します(著作権法第51条)。特許発明とは異なり、著作権には登録や申請といった手続きは必要ありません。これを無方式主義と呼びます。また、著作権の保護期間は作者の死後70年間存続します。そのため「著作権が切れているから自由に使用可能」といった話がたまに耳に入りますね。

問題の選択肢1の「感情を書き下ろしたエッセイ」は文芸の表現であり、自身の感情や思想なので創作性を求められる可能性があるため、著作権が発生することが考えられます。

では、なぜ他の選択肢は著作物としての条件を満たさないのでしょうか。

選択肢2:防犯カメラの写真は、創作性が乏しく、著作権が認められないことがほとんどです。理由は本記事の下でさらに詳しく解説します。

選択肢3:オリジナルであっても、「アイデア」は表現物ではないので、著作権の対象にはなりません。しかし、「アイデア」「コンセプト」「発明」は、特許権など他の種類の知的財産権の対象となることがあり、さらに契約上で保護することができます。

選択肢4:「十分な創作性」の意味には、「誰でも簡単に創作することができるものではない」という意味合いが含まれます。Pythonを使用したとしても、「2 + 3 = 5」のようなコードは教われば初心者でもほとんどの場合書けるものであるため、著作権が認められる可能性は低いです。

カメラ画像の著作権について

様々な対象物や背景で撮影された写真の著作権について争われる事例があります。著作権法第10条第1項第8号には「写真の著作物」については例示されています。著作権法上での「写真」の明確な定義はなく、従来の「フィルムに映像を焼きつける写真」も「デジカメやスマホで撮影した写真」も該当します。

上記で述べた「著作権が発生する条件」を思い出してみましょう。それに基づき、防犯カメラの写真(冒頭の質問の選択肢2)の他に証明写真は著作物としての性質を持たないとされています。これらは「人間を忠実に複写したもの」であり、撮影者によって意思感情が表現されているわけではなく、撮影する上で創作性があるとも言い難いです。

「絵画」や「彫刻」の写真の著作権

では、人間を対象にするのではなく、「絵画」や「彫刻」を対象としたものはどうなるのでしょうか?

絵画をそのまま撮影した写真には、(元の絵画とは別の)著作権は発生しません。なぜなら、単にカメラのメカニズムを介して絵画を忠実に複写しているだけで、創作性が認められず、著作物とはみなされないためです。
一方、意外なことに、彫刻の撮影には著作権が発生する可能性が0ではありません。彫刻が「立体物」であることがポイントです。立体的な彫刻を撮影する際に、カメラやレンズの選択、角度、照明など撮影者の創意的な工夫が十分に認められた際に、著作物として保護されます(著作権法第2条第1項)。

ただし、元の彫刻作品も著作物であるため、条件によっては、著作物の撮影や写真の使用には、著作権者の許諾が必要である点にご注意ください。反面、これも実に複雑な話になります。例えば、屋外の場所(公有地、民有地によらず)に恒常的に固定されている美術の著作物は、自由に撮影することが可能です。さらに撮影した写真の加工(翻案)やインターネット上での公表(公衆送信)が可能です。これらが可能な理由は、屋外の場所とは公有地、民有地に関わらず、一般公衆に解放され、入場制限がない場所を意味するためです。
しかし、美術館に飾ってある著作物の撮影(=複製行為)には著作者の許諾が必要となります。ほとんどの場合許可されていません。注意しましょう。

自然風景の写真の著作権

自然風景など身の回りの一般的な対象物の写真は、著作物とみなされる可能性があります(一部例外あり)。被写体の選択、撮影する季節、撮影場所、撮影時間、カメラやレンズの選択、撮影の角度などに撮影者の思想感情がフィルム上に創作的に表現されたものと考えられるからです。
そして、別の人がとった写真そのものを写さない限り、別の写真と同じ自然風景を同じ季節に、同じ方角から撮影した写真を使用しても、ほとんどの場合は著作権侵害になりません。

 

写真の権利には「著作権」の他に「肖像権」も深く関連します。後続の記事ではこれを取り上げる予定です。

執筆担当:ヤン ジャクリン (GRI分析官・講師)

 

 

 

 

 

 

yan
データ分析官・データサイエンス講座の講師