雑談

龍堂薫子、その人生と部屋

 

No.1

Room No. 015:龍堂薫子、その人生と部屋(30代 女性 半同居世帯)

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今回訪問したのは、浅草線沿線に住む36歳フリーライターの龍堂薫子さん。小学校から油絵を習っていたというからお嬢様的子供時代を送ってきたようにも思う。就職も広告代理店で頑張って働いていたが、ある事件をきっかけに「ヤリマン」人生に突入。ヤリマン生活を記録したブログが編集者の目にとまって物書きとしてデビュー。今はそれでなんとか暮らしていけるようになった。詳細はブログ「鬼畜!ヤリマン道場」http://d.hatena.ne.jp/ryudo-kaoruko/で。ちなみにヤリマンとは「不特定多数の初対面男性とセックスしてしまう女性」と自身では定義している。

 

男性関係でブチ切れ、ヤリマン道に
ブログでは最初に、「冴えないちょいデブスの私。人並みに彼氏もいたし、そうひどい容姿ではないが決して美人とかかわいいとは言えない。そんな私がある時スイッチが壊れてしまったらしく、逆ナン&ナンパで即、誰とでも寝るようになった」とある。

白い椅子、白い本棚、白いモニター、白いスピーカー(二つの球体)と統一感ある室内。白い椅子、白い本棚、白いモニター、白いスピーカー(二つの球体)と
統一感ある室内

それは7年前、まだ会社勤めをしている頃だった。付き合うというのではないが、時々セックスをする関係だった会社の同僚がいた。彼女がいるとか別れたとか、また戻ったとか断片的に聞いて、この人と付き合えるのかな、と思っていたら、ある日知らない女性と突然結婚してしまった。しかし「結婚する」はもちろん、結婚してから会社などで会っても、何の言葉もなかった。
しばらく落ち込んでいたが、ある日彼女の中で何かスイッチが逆転し「開き直って楽しくやりまくろう」と思うようになる。そしてある夜の電車の中。隣に座った男性に「この電車○○行きですよね?」と聞き、答えた顔が好みのぽっちゃり眼鏡だと気がつくと、次の瞬間反射的に「次の駅で一緒に降りませんか?」と聞いていた、という。そして相手の答えは「うん」。
数分後には2人で彼女の家にいた。しかし男のあまりの無防備さに気がついて「私が猟奇殺人鬼とかだったらどうするの?」と聞いたが、「大丈夫でしょ」と気にしない風だった、という。

無防備な男たちと次々関係
殺人鬼は極端でも、最近の人は美人局(つつもたせ)という犯罪を知らないのだろうか? ドアを開けたら入れ墨の男が待ち伏せしてたらどうするつもりだったのだろう。彼女の話を聞いているとそんな男性ばかりだ。そんなことにはならない、という何か嗅覚があるのだろうか?

部屋の壁もさっぱり。部屋の壁もさっぱり

彼女によると、その男は最初の夜に名刺を置いていったそうだ。某有名建設会社だったという。

「その男とは結局その後2年ぐらいセフレ(セックスフレンド)だったんですけど、だんだんセックスしなくなって。かといって友だちづきあいとかではなく。家に来て寝ていくだけなんです。しまいにはマッサージばかりやらされるようになって、私にも彼氏ができたので、会わなくなりました」

避妊は気をつける。入れ物がおしゃれ。避妊は気をつける。入れ物がおしゃれ

この男はどういうつもりなのだろうか?
その男は男として、それとは別にその後も逆ナン&ナンパ、即セックスの日々が続く。絡まれてる所を助けられた男にそのまま家に連れ込まれたり(助けられてない気もする)、停車しているタクシー運転手を呼び止めて車内でセックスしたり、近所の道端で酔っ払いながら通りすがりの男を物色したり。その中で気に入った男はセフレとしてキープしておく。すると常時何人かはすぐにセックスできる男がいる、という日々を過ごしていた。

ハプニングバーにはまる
その後、ハプニングバーに行くようになる。きっかけはナンパされた男が「行きたいけど一人じゃ怖いから」と誘われてから。初めての時はちょっと引いたが、なにしろ女性客のお酒はタダで、しかもめちゃくちゃちやほやされるので、楽しくなってしまった。最初は自分のセックスが人に見られたりするのはいやだったが、通ううちに慣れてきて、自分もいろいろな男とセックスするようになった。最近はいろいろ厳しい目があり、昔のようにおおっぴらではないというが、ここで知り合ってセフレになることも多い。
最近は行く店は決まっている。ほかにも行ったがやはりノリの違いで、一か所になってしまった。客層や、SM色とかいろいろあるのだという。興味がありそうな知り合いの女性は連れて行ってけしかけて楽しんでいる。連れて行ったうち半分ぐらいの女性はハプニングバーにはまるという。自分自身はもう常連化してあまりちやほやされないので、友達を連れて行くときぐらいしか行かない。

押し入れはきちんと整頓されている。押し入れはきちんと整頓されている

行きたいと言ってくる女性は「AVじゃない素人のセックスが見たい」とか「軽くしばられてみたい」といった人が多いという。料金は女性はタダだが、男性は高い。週末は朝までフリードリンクとは言え2万円近くする。それでも週3回通う20代とか、既婚男性もいるという。

半同棲の彼とはセックスレス
今は、ハプニングバーで知り合った彼と半同棲している。40歳でシナリオライターとして働いている彼は飲みに行って何日も帰ってこないで、ラブホテルにハプニングバーで知り合った女性と泊まっていたりする。しかも今は彼とはセックスレスだという。彼女の方はセックスしたい気持ちはあるが、彼の方が乗ってこないという。理由はよくわからない、という。「いやあ家族みたいなもんだからあ」などと言うそうだ。
いったいそういう関係は彼氏なんだろうか?と聞くと、

一時宝石にはまったこともある。一時宝石にはまったこともある

「一緒にいておもしろいし、尊敬できるところが多いんです。それに私に何も要求してこないし、尊重してくれる。意識がつながっていれば彼氏だと思います。たぶんほかのところでほかの女性とセックスしてると思いますけど、それは聞きません。二人の関係ではあまりセックスすることには価値を置いていませんから。発散するだけのセックスは私の周りではスポーツセックスって呼ぶんですけど、それはお互いいいだろうと」

結婚には関心がない。子供を欲しいとはまったく思わないので、必要性を感じない。それに結婚したら今のように自由に遊べない。結婚しても浮気して過ごせばいいじゃないですか、と振ると、それは彼女の倫理観では許せないのだという。

人間関係不得意だった少女時代
彼女は神奈川県の出身。母は30人ぐらい従業員のいた機械工場を経営していたが、小学校低学年の頃父と離婚し、いまは父の消息はわからない。母は中学の頃再婚したが、その相手とも5、6年前に離婚した。母は上昇志向が強く、厳しかったが、今は歳を取って、姉の子供(つまり孫)に夢中で会社はたたんでしまった。
彼女自身は小さい頃から絵を描くのが好きで、小学校から油絵を習っていた。人と遊ぶのが不得意で、趣味は一人でできることばかり。油絵も自分から親に習うことをお願いした。画家の先生の家に行って一対一で教わった。絵を習うというのはどういう風にやるのかよくわからないが、絵を描きながら、こうしたらいい、などとアドバイスを受けるのだという。

今はあまり描かないが、部屋の中には彼女の描いた油絵が飾ってある。今はあまり描かないが、部屋の中には彼女の描いた油絵が飾ってある

今はあまり描かないが、部屋の中には彼女の描いた油絵が飾ってある。

大学も写真学科に入ったが、それは一人でできるから。それまで写真を撮ったことはなかった。さすがに大学に入ると実技で写真の課題が多く、いろいろ撮影してはプリントしていた。サークルは映画のサークルや、昔からやっていたマンガのサークルに入っていた。

会社は不眠症で退職、ブログが縁でライターに
大学生活は楽しかったが、実家から片道3時間かけて通っていたので、飲み会などは少ししかいられなかった。しかも門限が11時。8時には大学周辺を出ないといけなかった。
卒業後、特に定職に就くのはいやだったが、親に就職しろと言われていやいや広告代理店に入った。会社とかきちんと務めるのはとうてい無理だと思っていたからだ。初めは3年頑張ろうと思っていたが、結局10年ほど務めた。仕事が特に楽しかったわけではないが、人間関係がいい会社だったので長持ちしたという。
最初の1年は実家から通ったが、その後都内で一人暮らしを始めた。しかし通勤時間は短かったものの駅から遠く、部屋も狭く収納も足りなかった。そこでしばらくして今の家に引っ越した。
しかしその後不眠症になってしまい、3、4年患ったあげく、肉体的に辛くなって会社は辞めてしまう。しばらく家でぼおっとしていたが、会社を辞める少し前から始めていた例のブログを同人誌のように本にして出すと、それが編集者の目にとまり、ライターの仕事をするようになった。今はスマホアプリの紹介記事や、電子書籍の官能小説を書いている。しかし今は仕事が減ってきたので、会社員時代の貯金を取り崩しつつ過ごしている状態。再就職しようかどうしようか思案している。

ベッドと芸術的な赤い椅子。ベッドと芸術的な赤い椅子

スタイリッシュな部屋、几帳面さ見える
部屋を拝見すると、ほとんどのインテリアが白でまとめられた非常におしゃれな感じだ。照明、ベッド、本棚、椅子、スピーカー、冷蔵庫、電子レンジ、掃除機、ヘルスメーターなどなど全部白。唯一違う色が、ユニークな形の真っ赤な椅子だが、非常にアーティスティックで10万円ぐらいしたという。こういうものを思い切って買うところに、美的センスと価値観を感じる。

きちんと順番に並べられた本棚。きちんと順番に並べられた本棚
自分でも描いていたのでマンガも結構読む。自分でも描いていたのでマンガも結構読む

部屋の整理も行き届いており、本棚はきちんと作者ごとに並び、背がそろえてある。この取材ではほとんどの対象者が取材前に「掃除と整理整頓をした」と話すが、やはりふだんの整理整頓具合はどうしても見えてしまう。かなり几帳面なタイプと見た。本棚にもニーチェ、フロイトなどが並び、哲学書も好きだという。宇宙論も読む。月に10冊は読書する。
食事を作ることはほとんどなく、一時期は出前を月に15回、などということが多く太ってしまったので、最近はやや反省して家で食べるようにしているが、買った物を食べることが多い。食事は夜に1日1回。だらだらした生活をしているので、昼は何かをつまんで空腹を満たしてしまう、という。
買い物などは近所の大きな商店街でだいたい済んでしまう。大きなスーパーなどはないが、小さな商店が多く、回れば用が足りる。あるいは近くの別の商店街まで行くと、飲み屋やレストランも多い。

さっぱりした冷蔵庫さっぱりした冷蔵庫
やはりさっぱりきれいなレンジ周り。やはりさっぱりきれいなレンジ周り
台所の棚も100円ショップの入れ物で整理整頓。台所の棚も100円ショップの入れ物で整理整頓
手前は自分で漬けたお酒。手前は自分で漬けたお酒
洗濯機置き場は扉の中。洗濯機置き場は扉の中
こんな感じだが、昔の洗濯機の大きさで作られているので、きちんとは閉まらない。こんな感じだが、昔の洗濯機の大きさで
作られているので、きちんとは閉まらない
お風呂には普通の粗塩を入れてバスソルト代わりにしている。 お風呂には普通の粗塩を入れて
バスソルト代わりにしている

取材後記

お話しした感じは、少しか細い声で人見知りしそうな印象。ブログで、とてもここには書けないようなことを書き連ねている人とは思えない。部屋のセンスも良く、聡明な印象も受ける。しかしヤリマンなのである。「ヤリマンって多いんですか?」と聞くと「多いですよ」という。みんな黙っているだけで結構いるはずという。確かに今の日本社会では、泣かした女の数が多い男は、勘違いしてしゃべりまくっても社会的に問題とはされそうもないが、女性の場合はいろいろ支障がありそうだ。だから目立たないのだろう。いや待てよ、もう今の日本では女性がヤリマン告白しても以前ほどは問題とされそうもない気もする。現にこの取材でも匿名とは言え2人もヤリマン告白されている。逆に男性の女性武勇伝は、今や人格を疑われて社会的にも制裁を受けそうだ。これをきっと保守の皆さんは貞操観念の崩壊などといって嘆くのであろう。しかし考えて見ると、貞操観念がなぜ必要かというと、大きな理由は結婚制度を円滑に維持するためだろう。彼女は結婚に意義を認めないという。そうした人が増え、さらに経済的に結婚が難しくなっている世の中では、貞操観念など無用の長物になるのも致し方ないのかもしれない。