雑談

1箱99ドル99セント!『99缶パック』のビールとは? – 費用対効果がバツグンのキャンペーン事例

8月最後の金曜の朝、茶を飲みながらインターネットを閲覧してるあいだに以下の写真を見つけた。これらの写真の共通点は、あるブツを誇らしげに紹介してるというだけなのだが、そのブツが、いまだかつてみたことのない物体だったので目を惹いたのだ。

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これ、355mlのビール99缶を縦3列 X 横33列に梱包したパッケージだ。横幅2.1メートルで重さも37キロ近くあり、明らかに持ち運びに不便だが、これまでにそんな不便なビールのパッケージは見たこともないため、視覚的インパクトがめちゃめちゃ高い。
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このビールはPeacemaker Anytime Aleと呼ばれ、テキサス州オースティンにあるクラフトビール醸造所Austin Beerworksが作っている。ビール名をPeacemakerからPeacemaker Anytime Aleと変更するにあたり、醸造所が始まって以来初の広告キャンペーンを打つこととなった。そのキャンペーンのアイデアを試行錯誤してる際に、この「99缶パック」アイデアは出てきたらしい。が、あくまでも1アイデアというより1冗談として暖めてたはずだったのが、実際実行してみることになったとか。

「99缶パック」は20箱だけ作られ、8月最後の木曜日にオースティン市内のみで発売されることになった。値段も分かりやすく、「99缶パック」1箱99ドル99セント。しかも市内のどの店で販売されるかは前日まで非公表で、木曜当日にツイッターまたはフェイスブック上で公表するという仕組み。

たった20箱しかないわ、当日までどこで売ってるかも分からないわ、でもビデオで見る限りそんなヘンテコなパッケージのビールはぜひとも入手したいわ、ってことで期待は高まりに高まったためか、限定パッケージはすぐに売り切れ、ラッキーな購入者はこうして続々と戦利品の写真をソーシャルメディアに投稿したわけだ。そして各ニュースサイトもそんな様をニュースに取り上げ、突然テキサスの名もないビールが1日にしてアメリカ全土に知れ渡ったわけだ。

このキャンペーン、比較的安価で、にも関わらず狙った以上の効果を上げたところがすごい。おそらく試作品・実物パッケージ・キャンペーンビデオ制作費など全て込みでも2万ドルもかかってないだろう。それで商品名変更後の商品認知を地場オースティン市内で狙ったはずなのに全国から問い合わせが殺到したため、結果としては9月はじめに再び「99缶パック」を再生産・販売する決定をしたようだ。それに、ここまで消費者の便宜に逆らった持ち運び・貯蔵・収納に不便なパッケージを作って人気を集めるというのもまた珍しい。我々日本人だと、消費者が求める便利さを追求するのが当然と思いがちだけど、ときには完全に不便な梱包方法を採用してみるのもアリ、なのかもしれない。

99缶パックのキャンペーンビデオ(登場人物は醸造所の社員たちばかり)

http://vimeo.com/100159727

Peacemaker Anytime Aleのサイト
www.anytimeale.com

99缶パックのデザインを請け負った会社のニュースリリースページ
http://helmsworkshop.com/news/item/30/