雑談

クラフトビール(CRAFT BEER)がキテる! – ミレニアル世代が飛びついたビールの新カテゴリとは?

ここ数年、酒屋やスーパーの酒売り場を訪れるにつけ感じるのは、ビール売り場が広くなってきてることだ。

少なくとも一連の世界的不況の前後頃までは、基本的にはアメリカの三大国産ビール(バドワイザー、クアーズ、ミラー)商品が売り場の大半を占め、後は有名どころの輸入ビール(ハイネケン、ギネス、コロナなど)が端っこに申し訳なさそうに置いてある、というような感じだった。

ところがここ最近は、そんな従来の品揃えに加えてクラフトビールなるものを何十も陳列しており、したがってビール売り場拡張と相成ってるようだ。

クラフトビール

このクラフトビールなるカテゴリー、その成長というか浸透というか進化っぷりは、明らかにキテるのだ。
ちょっと以下のデータを見て欲しい。
これはBrewers Associationが発表している米国ビール市場の最近5年間のデータ(#)だ。
(# 2013年度データはこの記事を書いてる段階で未発表)

ビールシェア

不況の煽りを受けてアメリカのビール市場全体が低迷・横ばいを続けるなか、クラフトビールというカテゴリーだけは、ほぼ毎年連続で売上高と市場シェアともども二桁成長させているという、成長のスピードと顕著さが一目でお分かりいただけるだろう。

いったい、ナニが起きてるのか?

ってか、そもそも、「クラフトビール」ってナンなのか?

前出のBrewers Associationが提唱する定義によると、クラフトビールとは、年間生産量が600万バレル(70.2万キロリットル)未満の、独立した(仮に大手醸造所の支配下にある場合は資本掌握が25%未満であること)醸造所が作る伝統的製法のビールのことを言うようだ。
ま、全国区でない小規模のローカルな醸造所が作るビール、くらいに思っておけば、間違ってないだろう。

そんなクラフトビールの台頭により、これまでならビール売り場で選べる種類が10種類もあるかないかくらいだったのが、突然50種類以上ものカラフルでオサレで興味を引くラベルのついたビールが鎮座ましますようになったわけだ。

クラフトビール

なんでこんなにクラフトビールがウケてるのか、考えてみたのだが、主な3つの要因はこんな感じじゃないだろうか。

■1:「ミレニアル世代(Millennials Generation)」の消費パターンと嗜好との合致
※「ミレニアル世代(Millennials Generation)」は1980年代から2000年代初頭あたりに生まれた世代のこと

この世代の大きな特徴は、物心ついたときにはインターネットがあったことだ。
よって情報もモノもあふれるくらい豊かなのに、自分たち自身は失業率と学費の高いなか教育を受け就職をし大人になったのでお金と時間はいつも足りないという時代を生きている。

そんなためかどうか、消費の傾向として、オリジナルなもの、価値の見出せるもの、信頼・共感できるものだったら、ちょっと高くても買うというがある。

まさに、大手ビール会社が大量生産で作る安かろマズかろの従来ビールなんかと比べると、クラフトビールなんかは、小さな会社(時には家族経営)が材料選びから仕上がりまで丹精込めてまるで職人技かのように作り上げるというオリジナル感と信頼感あふれるあたりが、ちょっと高めでもミレニアル世代には買いたくなるツボにはまるのかもしれない。

またこの世代の嗜好の特徴として、口当たりがよければ従来では有り得なかったような斬新なもの、奇抜な発想のものでも試してみるというのがある。
この辺の傾向がまさに昨今アメリカでみかけるようになった「ベーコン入りチョコレート」「チリペッパー・マンゴ・ジャム」「シナモン味ウイスキー」などの新手なフレーバーの食品勃興の起爆剤となってたりする。
同じようにビールも、フルーティだったり甘みが感じられたりと従来の国産大手ビールでは有り得なかったような口当たりの素晴らしさをクラフトビールに見出せてるのだろう。

■2:ビールに対するイメージの変化

我々日本人のように飲み屋にいったら老若男女問わずビールを飲むのが当たり前な立場からするとちょっと意外かもしれないけど、アメリカにおけるビールのイメージといえば、ブルーカラー労働者ひいてはあまりお金や学が高くない人の飲み物、という感じだったのだ。
ところが最近では、クラフトビールの味や仕上がりがあまりにも良いためかどうか、有名人シェフなどが食事と一緒に併せて飲むことを推奨しはじめた。
あたかも肉料理に赤ワインをペアリングするかのような間隔で、クラフトビールと料理のペアリングが浸透し始めたのである。
よって、これまでビール消費とは殆ど無縁だった、金もあり学も高い食通グルメ派のあいだでもクラフトビールが広がっていったというのがある。

■3:女性層の取り込み

「2:ビールに対するイメージの変化」の延長で考えられるもうひとつの要因は、今までは取り込めてなかった女性層をビール消費に巻き込めるようになったというのがある。

従来のビールに対するイメージのためか、国産ビールに共通する苦いだけでおいしくないビールの味のせいか、女性はビールを飲まないというのが業界の通説だった。

ところがクラフトビールには女性が好むような甘みのあるビールもあるし、デザインもオサレだし、何より有名人シェフなどの後押しで洗練されたイメージへと昇華したしで、とっつきやすくなったのだろう。

ま、というわけで、クラフトビールがそもそも良質で美味しいということが、シェフなど権威の擁護を受けてこれまで浸透できなかった層や新しく飲酒年齢に到達しはじめた世代にウケてるという、よい循環を生み出してるようだ。
過去数年、大手国産ビールが業績発表するたびに横ばい・低迷の理由を「不況のため」とし続けているが、クラフトビールカテゴリーの飛躍をみるにつけ、空しく響くのみである。