雑談

主婦向け広告に大異変!

従来とはかなり違った路線の広告キャンペーンを最近始め、良くも悪くも話題を集めているものを紹介。
 
通常アメリカで見かけるこの手の家庭用品の広告の路線ときたら、王道の定番はこんな感じだ。
 
ひとつは、「香り持続8時間!」「パイプに詰まった髪の毛も確実に取れる!」「油分50%カット!」のように、機能に重点を置いたメッセージ系。
 
あとは、家族がその商品を使ってどんだけ和んでるか、満足できてるか、みたいな、みぞおちにホンワカあったかい感じをお届けする感情訴求系。
 
で、先に挙げた3つの商品が、この定番路線を全く覆して、筋肉隆々のイケメンがセクシーに誘惑するという、いわゆる「Sex Sells(セックスは売れる)」路線を使い出したのだ。
 
「Sex Sells」はアメリカの広告においては基本中の基本というくらい、長年忠実に用いられている大原則である。
 
ビール広告に水着の美人女性が出てきたり、スポーツカーの広告に水着の美人女性がでてきたり、というのが典型例だ。
 
「Sex Sells」がなぜ有効なのかというと、伝えるメッセージがより過激でよりセクシーでより露出が高いほどに、心の中にそのメッセージがより強くへばりついて離れにくくなるからだ。
 
そうすることで次の購買の際に、へばりついた記憶から手繰って自社ブランドを選んでもらえれば・・という目論見なわけだ。
 
ただ、これまで「Sex Sells」路線といえば、綺麗な女性が広告に登場して男性消費者にアピール、というのがほぼ100%の定型だったのに、上記の商品は、ほぼ初めてこの定型を逆にして、ムキムキのイケメンが女性消費者を魅惑するというパターンにしたのがとても新手なのだ。
 
口火を切ったのは、下水管ヌメリ取り洗剤ブランドLiquid-Plumrの新商品”Double Impact(衝撃2倍)”の2012年のTVコマーシャル。
 


 

ヌメり取りを買い求めにスーパーにやって来たモサい主婦が、この商品の名前を見て、2人のイケメン配管工が家に来て代わる代わるに「管の中をクネらせて」「管の詰まりを抜き取る」という妄想をする・・というのがCMの内容。
 
日本語だと巧く伝えられなくて申し訳ないが、これら配管工のセリフは英語だと際どいダブル・ミーニングになってるのが面白い。
 
イケメン配管工妄想シリーズは、2013年の新商品”Urgent Clear(至急解決)”のTV広告にも再度採用された。
 

 
お部屋の芳香剤メーカーRenuzitは、これまた2013年、「ラズベリーの香り」「雨上がりの香り」「ハワイアンの香り」などの月並みな従来の香りの名前を刷新し、変わりに「リチャード」「ライアン」「ヒース」などと名づけ、それぞれの名前にふさわしいイケメンモデルも割り当てた。これにより購買客は、単に「ラズベリーの香り」の芳香剤を買って帰るのでなく、「リチャード」をお家に連れて帰る、というファンタジーを脳内で遊べるわけだ。
 

 
これら広告の反応はといえば、YoutubeでのTV広告視聴は100万ビュー超だのFacebookの「いいね!」急上昇だの、Zesty Guyは料理番組や朝のニュースに上半身裸出演でひっぱりだこになったりだの、なかなか反響は強いようだ。
 
もちろん「裸体の男性を使ってけしからん」という消費者抗議が盛り上がってるのも確か。
 
ま、明らかにこれだけ良くも悪くも話題になって商品認識が高まったという意味では、広告効果が有りなことは確かだろう。
 
 
なぜいま、このような従来とは逆バージョンの「Sex Sells」が出てきたのか?考えられるのはターゲットたる女性消費者像が時代とともに変わってきたことが挙げられるだろう。
 
過去何十年もこの手の家庭用品の購買者像といえば、専業主婦あたりをターゲットにしてデザインすれば大きなブレはなかったかもしれない。
ただ昨今は、女性の社会進出も進み、ターゲット像を専業主婦とひとくくりには出来にくくなってきている。
 
また女性の高学歴化、ひいては高収入所得者も増えて、海外旅行やら高額ショッピングやらオシャレな店で外食やら色々な刺激を日常的に経験しているような層からしてみれば、広告にもそれなりの刺激を求めてもおかしくはないだろう。
 
従来の単調な機能重視メッセージ広告では、その他有象無象と一緒でピクリとも響かないかもだけど、イケメンファンタジーとして伝えられた途端にもっと敏感に反応するようになってもなんらおかしくはないと想像できる。
 
というわけで今年も引き続き、たとえば食器洗剤とかアルミホイルとか他の家庭用品分野でも、イケメンが甘くささやきかける広告がもっと出てくるかもしれない。