データサイエンス

BIダッシュボード制作で順番に考慮するポイントPart1(誰に何を伝える、表示指標、タイプ、チャート、配置の工夫)

BIツールとは、Business の役に立つ Intelligence(知見)を引き出すための分析ツールです。BIツールを用いると、様々な種類のデータを一括管理し、多角的に分析することで、データドリブンな意思決定を迅速に的確に行うことができます。可視化作業の多くが自動化されているため分析の労力を最小限にし、より多くの時間を施策・思考に回すことができます。さらに、プログラミングが不要で、どなたでもBIツールの操作さえ学べば、自らデータ分析を行うことができます。

BIツールにはたくさんの種類があります。世界的に最も有名かつユーザビリティの面で優れているのはTableauでしょう。Tableauには、使い方が学びやすい上、グラフやチャートなどを作る他に、データを分析しやすくための機能:ドリルスルー、ドリルダウン、アクションフィルターなどの発展的な機能を提供しており、カスタマイズ可能なインターフェイスを作成可能です。

BIツールを用いてデータを可視化する際に、まずは個別のチャートを作成し、のちに複数の視点のチャートを組み合わせて、多角的に目的の分析を行うためのダッシュボードを作ります。

この記事では、ダッシュボードを作成する際の重要なポイントについて考えていきましょう。

1. ダッシュボード作成の重要なポイント

ダッシュボードを通じて、(作る側が)伝えたい情報も(見る側が)拾いたい情報もを効果的にわかりやすく表示することがBIダッシュボードの作成において一番重要です。

■分かりやすい

  • 意思決定・判断の材料になる (知りたいことを満たしてくれる)
  • 状況を把握しやすい
  • 誰が何の数字を見るべきかが明確

■使いやすい

  • 操作性
  • フィルタ(データを絞り込む)
  • アクション(チャート間の連動)
  • 処理速度

■見やすい

  • レイアウト
  • 色の相性
  • 必要な情報のみ強調

さらに、ビジネスの目的がブレないことは(可視化そのものよりも)重要です。

BIダッシュボードを使う目的として、以下のようなものが挙げられます

  • 現状確認:現在、何が起きているのか、タスクの進捗状況、目標数値に対する達成率などを確認する
  • 要因を分析:過去のデータに基づいてパターン、トレンドなどを明らかにすることで、課題に対する潜在的な要因を見出す
  • 監視:リアルタイムでデータの変動状況をモニタリングすることで、異常値などをチェックする

 

2. ユーザーに何を伝えたいのか

ダッシュボードの作成を始める前に、「このダッシュボードは誰が何を見るために使うのか」を自分に聞くのがマストです。

例えば、

  • 重要な経営指標の推移を週別で比べたい
  • 営業担当の一人ひとりの活動内容と進捗を一覧で見たい
  • 赤字が出ている商品を洗い出し、その要因を顧客区分、地域、季節性などを通じて見つけたい

データさえあれば片っ端から色々なチャートを作成し、ダッシュボードにいっぱいチャートを並べればよいというわけではありません。「載せようとしている情報が、ユーザーが見たい情報なのか」を常に意識しながら、必要なデータを集め、ダッシュボードを設計しなければいけません。つまり、ユーザー目線でいましょう。

 

3. どのような指標が必要か

ユーザーに伝えたい情報が決まった後に、「その情報を伝えるための指標」を選別します。

先ほどの例では:

  • 重要な経営指標の推移を週別で比べたい => 指標は「売上」、「利益」「販売数」など
  • 営業担当の一人ひとりの活動内容と進捗を一覧で見たい=> 指標は「訪問数」「商談数」「契約数」「提案書の数」「トライアル申し込み数」など
  • 赤字が出ている商品を洗い出し、その要因を顧客区分、地域、季節性などを通じて見つけたい => 赤字でいうと、指標は「利益」

他に、指標を表示するために必要なデータ項目、例えば適切な粒度の日付データも特定する必要があります。要因を見つけるためには、店舗名、地理情報、商品名、メーカーなどの項目も必要でしょう。

「どのような指標をどのような形で確認したい」かについては、ダッシュボードのユーザーにヒアリングを行いながら決めていくことが有効かもしれません。

4. どの種類のダッシュボードを作るべきか

ダッシュボードは、何を見たいのか、誰が見るのか、更新・閲覧の頻度によって設計が異なります。大きく分けて5つの種類のダッシュボードがあると思われます。詳細に富んだ複雑なものもあれば、明瞭でシンプルなものもあります。データ分析の目的を考えながら、最適なBIダッシュボードの種類を選びましょう。

詳細は、以下のリンクにまとめられています。

http://duelingdata.blogspot.com/2019/01/5-types-of-dashboards.html

  1. 経営層が重要指標を監視するための包括的なKPIダッシュボード
  2. 定期的に複数の問題をクィックに追跡するためのQ&Aダッシュボード
  3. 焦点を絞りながら詳細を掘り下げていくトップダウンダッシュボード
  4. 詳細レベルでパターンを探す・監視するボトムアップダッシュボード
  5. 1つ大きなマップや散布図で構成され、フィルターやドリルダウン機能が充実されているOne Big Chartダッシュボード。アナリストが仮説を、たくさんのデータ点を俯瞰的する形で分析するのに適している

このうち、業務で最もよく作るのは、KPIダッシュボードとトップダウンダッシュボードと思います。KPIなどの指標を介して主要な目標の達成進捗を追跡できます。

 

5. 適切なグラフを選ぶ

ダッシュボード上で表現したい指標や情報を決めた後に、それらを伝えるのに最も効率的なグラフ(または表)の種別を選びます。

例えば、月ごとの売上や販売数などの「指標の推移」など、時系列データを可視化するのに、折れ線グラフが一般的に適しています。

一方で、時系列の情報とともに、何らかの内訳も表示したい場合は、棒グラフ(棒の中に内訳)も使用可能です。内訳や構成を示すのに円グラフも使われます。

棒グラフはさらに、重ね棒グラフ表示を通じて、「去年と今年の売上比較」、「20代と30代の顧客の数の比較」などを行うことができます。

データの分布や2つの変数の間の相関関係を見るために、散布図や箱ひげ図が使われます。

複数の要素(例えば、アスリートの持久力、筋力、パワーなど)におけるバランスを見るために、レーダーチャートが使われます。

6. ダッシュボードへのグラフの配置

上記で、目的に適した幾つかの種類のグラフを作成した後に、1つの画面に並べて配置すると、ダッシュボードが出来上がります。

ここで、閲覧者に効率よく情報を伝えるために、ダッシュボードの目的と伝えたいメッセージに適した、配置の順番と表現の工夫が非常に重要です。一枚に配置する視覚的情報が多すぎて、どこを見れば良いのかがわからなくなり、またテーマがはっきりしないので、避けるべきです。チャートをバランスよく配置するようにし、場合によっては複数枚のダッシュボードを作ることも考えられます。

ダッシュボード上への 読みやすい情報構成に関しては「Zの法則」というのがあります。

私たちが記事や新聞を読むときに、特段探している情報がなければ、一般的には左上から始まり、次に隣の右上に、次に斜め下の左下に、最後に右下へ視線を動かしていきます。これはZというアルファベットを描くストロークと似ていますね。

ユーザーの本能的な視線の進め方に合わせるべく、情報を見つけやすくするために、原則としてZの法則に合わせるべきです。どのチャートも大事ですが、その中で、これは絶対見てもらわないといけない、特に大事なチャートがあれば、左上に配置しましょう。補足的なチャートまたは細かい分析を行うためのチャートは右下で良いかもしれません。

下図の例では、もっとも大事な全体の売上推移の折れ線グラフを左上、その隣や下にはその詳細をカテゴリごとに、顧客ごとに調べるためのグラフを配置しています。

少ないスペースでより多くの情報を表示するためにも重要です。

例えば先ほどの図の右上では、Tableauの「パラメータ」機能を活用し、棒グラフの表示を、売上、利益、数量の間で切り替えられるようにしています。そうすると、3つのグラフを作り余計な場所を取らなくて済みます。ただ、もちろん一眼で見比べたい場合は一気に並べますが。

この記事のPart2では、BIダッシュボードの、情報を伝えやすくするためのビジュアル的な工夫について、個人的にいつも気合を入れている要素を中心にお伝えしたいと思います。
また次回にお会いしましょう。

執筆担当: ヤン ジャクリン (分析官・講師)

 

yan
データ分析官・データサイエンス講座の講師