雑談

新しい「炎上」がテレビを救う?視聴率を急上昇させたアノ番組の秘密

最近のテレビ業界にあって、新番組の視聴率を上げていくことはどんどん難しくなっていると感じられます。そもそも新番組が立ち上がる多くの理由は、前の番組が他局に負けて目指すターゲットを失ってしまっていることが多いからです。以前は、そこへ今視聴者が見たい出演者を投入することで新たな関心を得、地殻変動を起こすことができた例も見られました。現在は視聴者の傾向がいっそう多様化し、「この人を起用すれば多くの人を振り向かせられる」というタレントがなかなか見つけられず、裏番組を踏まえてそれらと棲み分ける企画なり視聴ターゲットを考えることが一般的なケースとなっています。

そんな中で、今年に入り視聴率を目立って伸ばした番組がひとつありました。フジテレビ「ワイドナショー」(MC松本人志(ダウンタウン)・東野幸治ほか) です。

『ワイドナショー』が『サンジャポ』を猛追 勝負の鍵は?

安倍首相出演「ワイドナショー」 平均視聴率8.9%

この番組は2014年に深夜から日曜朝に枠移動しましたが、その時の裏環境はTBSテレビ「サンデージャポン」が非常に強く、日本テレビ「誰だって波瀾爆笑」がこれを追う状況で、フジテレビはその後塵を拝していました。ワイドナショーは扱う題材が「サンジャポ」と重なり後発であるという難しさもあり、また生放送のサンジャポに対し収録番組であるということで視聴者を奪うには難しい条件が揃っていました。

それでも日を追うごとに平均視聴率をアップさせていき、2016年に入っては芸能界を震撼させる話題が次々に起こったことも情報番組やワイドショーへの注目度を高める要因となり、今年度に入っては日本テレビを上回り順位を2位に上げました。この躍進には、番組の面白さだけではない原因があるのではないかと考えました。

視聴者の反応・反響を知る指標は、もはや視聴率に限らずネット上でつかむことができます。まずはインターネットにおける「送り手」の振る舞いがどう変わったかに着目し、どれだけ番組のことがネットニュースに取り上げられたかと調べました。

すると、今年6月に「ワイドナショー」のことを扱った記事は56件あり、昨年6月の6件から10倍近く増えていました。ネットの送り手が、この番組をネタにすれば記事を見てもらえると考えるようになったということがここ1年の変化でよくわかります。

今度は「受け手」の反応を見ます。
ひとつの材料としてtwitterで「ワイドナショー」を含んだツイートを数えてみると、2015年6月には12197件だったものが今年は28340件に倍増、それぞれのツイートにぶら下がるフォロワーの総和を「最大インプレッション」としてみると、その数は1939万9709から4105万5629と倍増以上となりました。送り手の目論見通り、ネットユーザーもそれに反応していると言えます。直近では国内ネットユーザーの半分以上にリーチしている可能性がある数まで達していますから、それだけ番組認知度も高まり、放送を目にする機会が増えた、それが視聴率アップという形に出たのではないかと考えられます。

番組開始当初から、MC松本氏を筆頭に多彩なコメンテーター陣の歯に衣着せぬ発言は放送後ネットニュースに取り上げられ、たびたび「拡散」「炎上」する様子が見られていました。炎上することが1回にとどまらず、「たびたび」起こるということが、注目度を上げていくにはとても大事なのです。結果的にこの番組は新たな「炎上商法」の主役になった、とも言えるのではないでしょうか。

加えて言えば、毎回の拡散・炎上が違った事件や違った出演者のコメントを発信源にすると、毎回同じような受け手ではなく違ったところに広がることもあるので、それだけリーチ=巻き込む人数が増える可能性があります。

関西でも、同じように注目を得てきた番組があります。読売テレビ・中京テレビ共同制作の「上沼・高田のクギズケ!」(上沼恵美子・高田純次ほか)です。MCの上沼恵美子さんは関西を中心に芸能界のご意見番としておなじみですが、ここ2年はお昼の時間帯にもかかわらず番組視聴率10%超が当たり前となり、横並びでも4年連続同時間帯トップと完全にお茶の間に定着しています。

この番組についてもネットニュースにどれほど取り上げられたかを調べたら、2015年6月は6件、今年は15件と関西ローカル番組としては異例の数に増えていました。このことも影響してなのか、上沼さんメインの他の番組と比べもっとも視聴年代が広く、同年代の「おばちゃん」だけでなくF1層にもよく見られています。

このように、ネットニュースを介してテレビ番組が裾野を広げていく、それが視聴率アップにつながるというのがサクセス・ストーリーの一例になるかもしれません。

<ネットニュース数・ツイート数・インプレッションはgoogleニュース・NTTデータより>