NotebookLM。もうみなさん使ってみたことはあるとおもいます。PDFやドキュメントをアップロードしたり、YouTubeやWebサイトのURLを渡すだけで、たったそれだけで、AIが内容を要約して、すごくわかりやすい自分好みの形式に変換してくれるし、質問にも答えてくれる。気楽に使えてとても便利なAIツールです。複雑な設定は必要ないです。現代のテクノロジーの結晶でありながら、とってもお気軽。やってることはお気軽な「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」ということになるかと思います。RAGっていうと専門用語っぽくて身構えてしまう人は多いともいますが、NotebookLMでは「ノート」というメタファーをつかって安心感を演出しています。ノートだったらいつも使ってるアレですから、なんら構える必要ないです。まるで「お気楽簡単なRAG」みたいな感覚です。
けれど、この「お気楽さ」こそがポイントになります。Notebook LMは、RAGという高度な技術をユーザーがあまり意識しなくても使えるように設計されているツールだからです。
Notebook LM https://notebooklm.google/
Notebook LMは「読むためのAI」
通常のRAG構成では、まず文書をベクトル化して検索できるようにしてから、関連テキストを取り出し、それをLLM(大規模言語モデル)に渡して回答を生成するという手順が必要です。
Notebook LMは、その一連の流れをユーザー側から隠していて、「資料をアップロードして質問するだけ」で完了します。まるで、裏側に優秀な司書と秘書がいるかのようです。つまるところNotebook LMは、**知識を“読むためのAI”**だと言うことができるかと思います。
この「読むためのAI」は、既存の知識を参照しながら説明するのが得意です。ユーザーがアップロードした範囲の資料の中で、正確に、分かりやすく話してくれます。言ってみれば“論文に詳しい家庭教師”的な存在です。
それに対して「知識を再構築するAI」
一方で、AIの進化の先には、まったく別の方向も見えてきています。それが“知識を再構築するAI”と私が呼ぶものです。
これは、ただ情報を読むだけではなく、複数の断片を組み合わせて、新しい構造や意味を生み出すタイプのAIを指します。例えば次のようなことが可能になります:
- 複数の論文から共通のパターンや矛盾を見つけ出す
- 離れた分野のアイデアを結びつけて、新しい概念をつくる
- ユーザーの思考ログを分析して、「あなたの中で繰り返されているテーマはこちらです」と示す
こうしたAIは、情報整理を超えて、思考の再編集を行うものだと言えます。もしNotebook LMが“読むための”AIなら、こちらは**“一緒に考えるためのAI”**に近いのかもしれません。
読むためのAIと考えるためのAIの分かれ目
Notebook LMの強みは「自分がアップロードした資料の範囲内で回答してくれる安心感」にあります。実際、公式には「モデルは、あなたがアップロードしたコンテンツだけにアクセスする設計」と説明されています。 これは個人の知識管理ツールとしては非常に理想的な設計です。
ただし、“再構築するAI”はそこから一歩前に出ます。自分の資料を越えて、外部の知識を横断的に参照し、異なる文脈のあいだに橋をかける。創造性や発見性が増す反面、リスク(たとえば誤った結びつき、出典の曖昧さ、プライバシー・データ利用上の課題など)も伴います。実際、教育・医療分野でこうした技術を使う際のリスクを指摘する研究も出ています。
この“読むためのAI/考えるためのAI”という分岐は、これからのAIツールの未来を分ける大きな線になる可能性があります。Notebook LMのような「読むためのAI」は、整然とした知識整理を得意とし、逆に、次の世代の「一緒に考えるためのAI」は、知識の再構成や発想を試みます。ChatGPTや、Claude、Geminiといったチャット型のAIはこちらの形に近づいてきていると思います。
前者はあくまで自分の知的作業をサポートしてくれるツールとして安心感はありますが、後者はそこから一歩踏み出し、利用者に発見をもたらすというところに魅力があります。「お手軽RAG」としてはじまったNotebook LMの今後の進化が楽しみです。
参考
- Introducing NotebookLM: an AI notebook for everyone
- NotebookLM: How to try Google’s experimental AI-first notebook
- The inside story of building NotebookLM
- NotebookLM: An LLM with RAG for active learning and collaborative tutoring (pre-print)
- Generative AI in clinical practice: novel qualitative evidence of risk and responsible use of Google’s NotebookLM (pre-print)



