育休復帰は「転職のようなもの」── これは、ロシア出身で日本での子育てを経験している筆者の実体験から出た率直な言葉です。海外出身の方が日本で育児と仕事を両立する際、どのような課題に直面するのでしょうか。今回は、ロシア出身で日本在住18年、GRIのコーポレートサービス部で働くF.Pさんに、育休復帰での挫折と学びについて寄稿していただきました。異文化の視点から見た日本の育児制度の現実を、率直に語っていただいています。(編集部)
育休復帰に失敗し、そして得たもの
大学卒業後、海外留学を経て現地での環境整備とキャリア構築に全力を尽くしました。同世代の多くは、30代後半になって初めて「結婚」や「出産」というライフイベントに巡り合います。私も気づけば、その典型的なレールを走っていました。そして、その失敗と克服について、これからのあなたにも届けたいと思う。
育児前:キラキラのキャリア、自由な私
15年以上にわたって、私のごく普通の毎日はルーティン化されていました。
平日は朝から晩まで「オフィスワーク」、元気が残っていれば友達と「高級レストランでのご褒美的なディナー」、土日は「季節に合わせた遊び」や「自己啓発」。まさに自由な人生を楽しんでいました。
24時間365日、「キラキラ輝くルックス」でコーデを楽しむのも私の大切な一部であり、個人としての存在を世間にアピールする時代でもありました。
妊娠でライフスタイルが一変
ところが、命を授かってからは健康面を考え「在宅勤務」へ。
食事管理のために「自炊」へと切り替わり、安全のため「自宅から近場で過ごす」ことを徹底。気持ち悪いほど、180度回転したような、シンプルに整えられた生活に変わりました。
よく言えば、「自分自身に意識を向ける時代」が始まったのかもしれません。
産休をきっかけに、人生で初めて“自分(と赤ちゃん)”を中心に考えるようになりました。
また、自分が子供だった頃に大好きだった外遊び(散歩やプール)を思い出し、健康管理のためのキッチンマネジメント(食材の調達、メニュー開発、衛生・コスト管理、キッチン運営全体の品質管理)を学ぶことで、家族が増えても効率的に台所をまわす術を身につけていきました。
育休復帰で気づいた「転職並み」の変化
そして、いよいよ迎えた育休明けの「ニューリアル」!
育休前に勤務していた会社に復帰したつもりが、契約形態、業務内容・手順フロー、
そして何より大切にしていたチームの構成までもが変わっていました。
復帰というより「転職した気分」だったというのが、正直なところです。
出勤前後には子供の送り迎えがあり、短時間勤務(時短勤務)となった結果、労働時間の減少に比例して基本給も減額されました。
一般的な制度とはいえ、育児休業給付金(*)と同程度かそれ以下となると、子どもが生まれる前より負担が増えているのに、自分が社会に対してアウトプットしているものに見合ったリターンがあるのか……と疑問に感じることもあります。
また、6時間勤務(法律上、休憩なしでOK)を終えてすぐに子供を迎えに行かなければならないため、以前のように社員とのコミュニケーション(部活動への参加など)も難しくなりました。
新しい目標とセルフマネジメント
一方で、人生の目標ははっきりとしてきました。
毎日の行動を計画的に管理しやすくなったとも感じます。
仕事中は仕事に集中し、子供との時間は思い切り一緒に遊ぶ。
そんな時間配分ができるようになり、無駄なエネルギーや時間の浪費も減ったのは間違いありません。
そして、何よりも大変なのは「自己管理」だと気づきました。
子どもが生まれることで、家族構成や自分の社会的立場、家族内の役割までが大きく変わります。
環境が一変すれば、自身の行動、感情、思考、時間など、あらゆる面のセルフマネジメントが必要となるのです。
新しい環境の中で「自分自身が軸になる」と意識すれば、たいていのことはうまくいく。
逆に、相手に責任を押しつけたり、パートナーとのコミュニケーションをおろそかにすると、思わぬトラブルに発展し、その後の対応も互いに大変になります。
「女性として生きる」という願いと再構築への第一歩
そのうえで、私の中には「女性として生きたい」という強い願望があります。
これを新たな環境で実現するのは至難の業だが、そこを乗り越えられたとき、家族全員がハッピーになれると信じています。
そのような中、私は「女性としての人生目標」を見直す機会に恵まれ、心理カウンセリングとコーチングを始めた。
この体験を通じて言えるのは、育休復帰に“失敗”したことが、人生の再構築と新しい価値観の発見につながったということ。
「失敗」は決して終わりではなく、「得るもの」につながるきっかけにもなるのだと、今ならはっきり言えます。



