雑談

「港区女子と足立区男子は永遠に出会えない」は本当なのか?

この前(と言ってもだいぶ前なんですが)Twitterでこんな記事を見つけました。

コラムニストで独身研究家の荒川和久さんと、脳科学者の中野信子さんの対談の記事で、内容としては「独身女性はセキュリティのしっかりした賃貸物件の多いエリアに住む傾向がある一方、男性独身者は家賃が安いエリアに住んで浮いた分を飲食費に充てている」といったものでした。

【荒川】比率でいうと、港区・中央区・渋谷区とかは女性が圧倒的に多い。逆に男性が多く住んでいる区は、20代から60代までで1位、2位、3位がほぼ同じです(※2015年国勢調査より単身世帯の男女比で男性のほうが多いランキング)。つまり、江戸川・葛飾・足立の3区は独身男性の一人暮らしが非常に多い。

(中略)

【中野】「港区女子と足立区男子」、面白いですね。住むエリアを色分けできてしまう、と。

タイトルは興味を引くために少し扇情的なものになっていますが、実際に記事を読んでみると「港区女子と足立区男子が本当に出会えない」と主張しているわけではなく、あくまでデータを見ると傾向として独身男女は住むエリアが分かれるということを示唆しているだけでした。(これ以外にもデータをもとにしたストーリー展開がとても面白い上に参考になるので気になる方はぜひ読んでみてください。)

ですが、記事の中で住むエリアが色分けされたプロットがあるわけではないので、実際にどれくらい差が出るのか、本当に色分けできるのか見たくなってくるのがデータサイエンティストのサガ。
ということで、弊社製品のLLocoを使って実際に可視化してみたのでその結果をご共有しようと思います。

LLocoの製品詳細は以下のページをご覧ください

 

23区を男女割合で色分けするとどうなるか?

早速ですが、23区における20-30代の男女割合をTableauで可視化してみると以下のようになりました。一つ注意しておきたいのが、これは未婚・既婚かかわらず全ての区民を分母にして比率を計算していることです。記事は独身世帯に絞ってるっぽかったので若干乖離はあるかもしれませんが、大抵の既婚者は同居することや、世代を跨ぐほどの歳の差夫婦は割合として少ないと考えると、そこまで違ったものを見ているわけではないでしょう。

23区の男女比(20-30代人口を分母)の色分けと男性割合・女性割合が多い区TOP5。赤に行くほど女性割合が高く、青に行くほど男性割合が高い。男女半々の場合は灰色。データは2015年国勢調査をもとに作成(LLoco)。表示が消えているが、文京区と板橋区に挟まれているのは豊島区。

 

まずぱっと見で見て取れるのが、記事でも言われているように、「女性が多い西側エリア」と「男性が多い東側エリア」でかなり色分けされていることではないでしょうか。言葉で説明されるだけでなく、こうやって地図上に可視化すると違いがはっきりわかって面白いですね。

ここからは男女それぞれに着目して割合が多い区ランキングを見ていきます。
女性割合が多い区は以下の通り。

女性割合(20-30代)が多い区TOP3

(1)港区:52.3%
(2)中央区;52.2%
(3)世田谷区:52.1%

記事ではTOP3が港区・中央区・渋谷区と紹介されていたので3位だけ違いますが、上位2区は同じです。「港区女子」という言葉が存在するくらいには港区は女性比率が多いことがわかります。(追記:「港区女子」は別に)

逆に男性割合が多い区は以下の通り。

男性割合(20-30代)が多い区TOP3

(1)台東区:53.2%
(2)中野区;53.0%
(3)千代田区:52.9%

記事ではTOP3が江戸川区・葛飾区・足立区と紹介されていたので、ごっそり違っています。おそらく江戸川・葛飾・足立は既婚世帯が多いために独身世帯だけで見たとき(記事)と人口全体で見たとき(この記事)で乖離が大きいのでしょう。

 

20代・30代を別々に見ると?

ちなみに20代と30代を分けてみてみると、もう少し違った見え方になります。

20代に絞ったときの男女比色分け

23区の男女比(20代人口を分母)の色分けと男性割合・女性割合が多い区TOP5。データは2015年国勢調査をもとに作成(LLoco)

 

30代に絞ったときの男女比色分け

23区の男女比(30代人口を分母)の色分けと男性割合・女性割合が多い区TOP5。データは2015年国勢調査をもとに作成(LLoco)

 

まずは女性から見ていくと、港区、中央区、世田谷区、目黒区あたりはともに上位にきていることがわかり、この辺のエリアは一貫して女性に人気であることがわかります。

一方で、20代では女性割合が高かった練馬区、板橋区、杉並区なんかは30代でみると女性割合がそこまで高いわけではなく、逆に文京区、江東区、品川区あたりでは女性割合が高くなっていることがわかります。この辺のエリアは大学(20代)や職場(2-30代)などに近いからという理由が関係してそうです。

次に男性に着目すると、2-30代で共に割合が大きい台東区を除いて上位陣は入れ替わっています。女性に比べて男性の方が引越しに積極的で、ことあるごとに住居を転々としているのかもしれません。特に30代では新宿区(新宿)、中野区(ほぼ新宿)、豊島区(池袋)ときっちりとした企業が多いイメージの副都心で男性割合が高くなっていて、職住近接っぽい傾向が見て取れる気がします。

 

結論のようなもの

以上を踏まえるとこんな感じの結論になるんじゃないでしょうか(投げやり)

・大雑把に言って西側は2-30代女性が多いエリア、東側は2-30代男性が多いエリア
・出会いは居住地域に限らないので、別に港区女子と足立区男子は永遠に出会えないわけではない
・家の近くでの出会いを期待するなら、女性は東側に男性は西側に引っ越すと可能性が高まる(かも)

 

(余談)港区内での男女割合

ちなみにLLocoは郵便番号粒度のデータなので、区レベルからもう1段階下のレベルでも男女比を確認できます。例えば、弊社(港区芝公園)のオフィスがあり、女性割合が高い港区は、細かくみると偏りがあるのかとか気になってきます。

ということで郵便番号ごとに確認すると下の図のようになります。

赤が全体的に多いのはわかりますが、新橋だったり、弊社オフィスがある芝公園、あとは港区を代表する(個人の感想)六本木なんかは男性の方が多いことがわかります。女性が特に多いのは白金台や芝浦、台場あたりでしょうか。

不思議なのは芝ですね。この図だとわからないんですが、北側が1-3丁目で女性比率がとても高く、南側が4,5丁目で男性割合がとても高い。芝3丁目と4丁目の間には何かあるんでしょうか。(知ってる方いたら教えてください)

Taizo Okabe
脳筋系データサイエンティスト。筋肉は裏切らない。筋肉。