導入事例

データ・ドリブン・マーケティングって、なに?[第4回]

4.広告のあり方を変えるデータ・ドリブン・マーケティング

 

冒頭でそれとなーく予告したとおり、広告業におけるデータ・ドリブン・マーケティングでは限界が生じることは皆さまも既にお気づきのことと思います。簡潔に言えば、我々がクライアントに提案できることに限りがあるということです。

その一方で、先端企業においては、最新テクノロジーによる新しい広告手法の開発を目指す動きもあります。この動きは「マーケティング指標の3つの課題」で示した3つ目の、「でっ、何をすれば良いの?」の解決を前に進めることにも繋がります(そうであってほしい!)。

事例を示します。ひとつは皆さんもご存じのJapan Taxi社のタクシー後部座席に設置されたタブレット端末での広告表示です。残念ながら、そのタブレット端末のカメラで乗客を許可なく撮影していたとして、個人情報保護委員会から行政指導を受けていた事案がありました。このタブレット端末広告の可能性は、性別に応じて広告を変えるようなことでなく、その端末で自分のお気に入りの買いたいモノが表示され、即時決済ができることにあります。自宅で見ていた趣味のサイトの情報が、カードを擦ると引き継がれていて、これまでのインターネットでしか実現していなかった広告連動が、リアルな場でも実現していきます。より長距離な移動が可能な鉄道や航空機も狙いを定めている広告事業です。

もうひとつは、遠く東欧の国の事例になります。エストニア(あのスカイプを生んだ世界最先端IT国家です)で繰り返し実験が行われているX-Roadというデータ交換基盤による個人情報の活用です。例えば、銀行が住宅ローンの審査のために、国民の住所をX-roadで確認することが可能です。調べられる方の個人は、銀行が調べた履歴やなぜ銀行がそれを調べたかをチェックできるようになっています。あるいは、引っ越しを決めた際に、電力会社に自分のデータにアクセスできるよう権利を与えると、無駄な労力を使わずに電気が使えるようになるというしくみが実現しています。もちろん、病院や学校との連携も進んでおり、保険金の支払いの簡素化や在学の証明にも使えます。

このように、ネットにとどまらずリアルの場でも広告が連動し、即時に買い物ができるようになる一方、(エストニアほど上手くいかなくても)個人の情報を自分が保持し、相手方に権利を与えられるようなしくみができると、企業としてはいかに個人情報を提供してもらえるだけの信頼のある企業なのかがもはや大事であって、商品やサービスだけの広告は成立しなくなります。つまり、個人の情報へのアクセス権獲得がマーケティング戦略の最初の課題になるわけです。

広告はいまも昔も時代の空気を作ってきました。そのような役割が現在では薄れてきているのは事実です。それでも私は、広告の役割は変わってもその重要性は変わらないと思います。表面的に格好いい広告は減っていっても、自分が必要とする広告は増えてほしいと思うからです。そういった消費者の要請に応えられる広告がまもなく実現できるはずです。

 

図表3.エストニア政府が発表したX-Roadの概念図

 

※JAAA誌9月号既掲載分を一部改編