導入事例

データ・ドリブン・マーケティングって、なに?[第2回]

2.輝かしい!!マーケティング指標?

 

マーケティング指標の代表的なものとして「ブランド認知率」とか「顧客満足度」などがあげられると思います。ダイレクトマーケティングの分野では「解約(離反)率」や「キャンペーン反応(応諾)率」が重要視されます。インターネット上の行動指標としては「クリック単価」や「コンバージョン率」、「直帰率」などが重要です。沢山あるマーケティング指標のどれを採用すれば良いのかわからない担当者は多くいます。

しかし、それらの指標をわかりやすく分類することで、我々の理解を助けることができます。ここでは、計測する対象を「人の心と頭を測る」「人の行動を測る」「お金の回り方を測る」に分類することにしましょう。インターネット上の指標の多くは、ここで言う「人の行動を測る」部類になります。現在ではデータが細部に、しかもリアルタイムで確保できるようになったことで、マーケティング指標の細分化と精緻化が可能になってきました。

 

図表2.代表的なマーケティング指標の分類とそれぞれの指標の定義

図表2に、代表的な指標とその定義を示しました。各企業が扱っている商品やサービスが異なりますし、採用しているマーケティング戦略も違いますので、どの指標がどの程度重要なのかを担当者が決めるのは簡単ではありません。先に述べたとおり、貴方の会社にとってどの指標を採用すればよいのかさえ、簡単には決められない問題があります。あるいは、貴方にとっては各指標の定義を決めることも非常に難度が高い問題かもしれません。

例にとると、「来店率」をとりあげても、どの期間(毎日、1週間、1か月、どれ?)で測定するのか、店舗を知っている人の合計が分母でいいのか、こんな簡単なことも回答がすでに用意されていることはないからです。

さらに言えば、マーケティング指標がある程度整い、その結果がストレスなく手に入れることができるようになったとして、貴方が「次に何をすれば良いのか?」と上司に聞かれれば頭を抱えることになるでしょう。

 

マーケティング指標における3つの課題:

1)自社にとってはどのマーケティング指標がどれだけ重要なのか

2)そもそも、それらマーケティング指標は正確に計測できるものなのか

3)マーケティング指標の結果を見て、では何をすれば良いのか

 

データ・ドリブン・マーケティングの目指すところは、これらの大きな3つの課題に挑戦することが第一段階と考えています。私が取材して知るところでは、3)の「何をすれば良いのか?」に直接的に答えられなくても、それに近い示唆を自動的に抽出する「処方的分析」呼ばれるテーマを研究している先端IT企業もあります。私たちの会社でも、解析作業は機械学習(Machine learning)で自動的にできるように、かつある予測モデルに基づいて得られた特徴量(attribute)をわかりやすく「見える化」するツールを提供し始めています。ある案件の顧客の翌月の購買金額を予測した結果では、”73%”を言い当てています。(下記リンク先を参照)そのうち、購買回数がその予測を当てるために最も大きな要素となっています。しかもその購買回数はある一定数以上になると予測精度に貢献することも示されています。このように、予測の精度とともに示される特徴量の性質を理解できるようになると、次の施策にすぐに活かすことができます。

マーケティング予測の分野での研究開発が進んでいくとしても、マーケティング戦略の立案や広告クリエイティブの創造的な仕事は機械学習ではまだまだ抽象度が高く、上手い解答は得られそうにありません。まさしくその分野でこそ貴方の力が必要な時代になりつつあります。

リンク:https://gri.jp/service/forecastflow

 

Topic:日本最大級の会員を持つ小売兼サービス企業の事例

小売りやサービス系ショップでは店舗が最大の媒体広告です。彼らは”フラッグシップ”と呼ばれる店舗をつくり、話題性を獲得し、認知とブランディングを図ります。そこでは、従来のマスコミュニケーションによる広告媒体単体でのマーケティング計画はありません。彼らにとっては、店舗のデザイン設計やサービス開発はトップマネジメントの仕事です。まさしく特殊な技能が持った人間が集まり、創造力を発揮していく仕事です。一方で、彼らにはポイントカード会員と呼ばれる顧客の購買データが膨大にあります。日々のマーケティング計画の細部に渡り、マーケティング指標が「見える化」され、担当者は次の計画案づくりに臨みます。

しかし、他社がうらやむくらいシステム環境の整備が整っている彼らでも、「マーケティング指標における3つの課題」には対処できているとは言えません。つまり、方法論としてのデータ・ドリブン・マーケティングには到達していないということです。そのような現場を観察していると、これからは、広告費を減らしてでも、マーケティングに関わる組織活動の全体を支援するような投資が企業格差を生んでいくような時代になったと私は確信しました。

 

※JAAA誌9月号既掲載分を一部改編