データサイエンス

判事は本当に正しい判断を下しているのか?- マネーボール理論を刑事司法に応用した画期的な事例

 

「マネーボール」という映画では、選手や敵チームのデータを分析し、弱小野球チームを強くさせていく様子を描いています。データを活用し、課題を解決することは、もはやビジネスだけに限った話ではありません。

アメリカ・ニュージャージー州の司法長官になったアン・ミルグラム氏は、現状の刑事司法の問題解決にも、データ分析を応用できると訴えています。既にあるデータを有効的に活用出来れば、犯罪抑止や刑務所のコスト削減など、様々な問題の解決の糸口になるのではないでしょうか。

問題の背景

  • 最近まで司法の現場ではデータが活用されておらず、適切な判断を下すための手段やツールがなく、勘と経験だけで重要な判断を下していた。
  • 毎年全米で1200万人が逮捕される。そのほとんどが危険度の低い軽犯罪容疑であり、まだ裁判も始まっていない危険度の低い容疑者を多額の税金を使って長期拘留するような事例がたくさんある。
  • 一方で、釈放された場合に再犯の可能性が高い容疑者を釈放してしまう事例も多い。
  • 客観的な情報をもとに、逮捕後に拘留か釈放かを決める必要がある。その判断が刑事裁判の出発点であり、その後のすべてに影響する。

解決策

  • 刑事司法の現場にも「マネーボール」のようなデータ分析、統計学に基づいたリスク評価を導入する。
  • 全米のどこにでも転用出来る、ユニバーサルなリスク管理ツールを作り、判事が客観的な判断を下せるようにする。

効果

  • ニュージャージー州カムデンでは、殺人事件が41%減少し、犯罪の総数も26%減少した。
  • このツールはケンタッキー州を始め、他の州での導入も始まっている。

今後

  • 今後5年以内に全米の判事がツールを利用できるようにする。
  • 判事だけでなく、検察官や警察官用のツール開発にも着手している。
  • 従来の「勘と経験」と、データ分析を合わせて最善の判断を下せるようにする。