生成AIを実務で使うには、AIが参照できる知識源をどう豊かにするかが大切です。この課題に対して、RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)とCAG(Cache-Augmented Generation、キャッシュ拡張生成)が広く使われています。どちらも学習済みモデルの内部知識だけに頼らず、必要な情報を外部から取り寄せたり、よく使う情報を手元に保持したりすることで、より目的に沿った回答を作ります。
RAGは、ユーザーの質問があるたびに、外部のデータベースや情報源から関連情報を検索し、その結果を基に回答を生成します。常に新しい情報を参照できるのが大きな特徴です。ニュースや専門分野の動向、企業内の最新ドキュメントなど、変化が速い情報に基づく回答に向いています。いっぽうで、検索には時間がかかり、外部サービスへのリクエストが増えるほどコストもかかります。リアルタイム性が強く求められる場面では遅延が課題になります。
CAGは、RAGとは発想が異なります。利用頻度の高い情報や特定タスクに不可欠な情報を、生成AIが参照しやすい一時的な記憶領域(コンテキストウィンドウ)にあらかじめ用意しておきます。質問が来たら、このキャッシュされた情報から必要なものを取り出して回答します。外部検索を省けるため、高速で低コストに動作します。社内FAQ、定型対応、マニュアル参照などでは効果が大きく、業務の自動化にも貢献します。ただし、一度に扱える情報量には限りがあり、常に変化する最新情報や広範な知識を網羅する柔軟性はRAGほど高くありません。
このように、RAGとCAGは「知識をどう手当てするか」という点で考え方が異なります。どちらが常に優れているわけではなく、目的に応じて選ぶか、必要に応じて組み合わせるのが現実的です。
RAGとCAG:その進化の軌跡と核心的な違い
RAGは、2020年にMeta(当時Facebook AI)が発表した論文で広く知られるようになりました。学習データの古さや、事実に基づかない出力(ハルシネーション)の問題に対し、外部知識を取り込むことで精度と信頼性を高める枠組みを示したものです。その後、応用範囲は自然言語処理を中心に広がりました。
CAGは、RAGの検索による遅延やコスト、運用の複雑さに対する現実的な解として注目されています。あらかじめ必要な情報を手元にそろえておく考え方で、高速性とコスト効率を重視するユースケースに合います。最近は長いコンテキストを扱えるモデルが増え、CAGが取りうる設計の幅も広がっています。
RAGは「必要になったときに外から調達する」動的な方式で、最新かつ広範な情報に強い一方、取得に時間がかかる可能性があります。CAGは「あらかじめ手元に準備する」方式で、範囲が定まった情報なら高速かつ低コストですが、常に最新とは限りません。事実確認や最新情報が鍵ならRAG、静的でよく使う知識の参照が中心ならCAGが適しています。
RAGとCAG:それぞれの「得意分野」と「限界」
RAGの強みは情報の鮮度と幅です。ニュース記事の作成、変化の速い市場分析、最新の問い合わせ内容に合わせたサポートなどで力を発揮します。学習データにない専門分野でも、外部データを参照することで対応できます。反面、外部検索の分だけ処理時間とコストが増えます。
CAGの強みは処理速度とコスト効率です。よくある質問への自動応答、社内規定やマニュアルに関する問い合わせ、特定プロジェクトの頻出情報の参照などでは、外部検索なしで即時に応答できます。制約は、コンテキストウィンドウに入る情報量に上限があることです。技術の進歩で文脈長は伸びていますが、すべての情報を常に手元に置くのは現実的ではありません。新規追加や稀な情報は、CAGだけでは拾いにくいことがあります。
この違いを踏まえると、RAGは「広さと最新性」、CAGは「速度と効率」に強みがあります。実務では、頻出の問い合わせはCAGで即時対応し、専門性や最新性が必要な内容はRAGに回す、といったハイブリッド構成が有効です。
RAGとCAG:社会への影響とこれから
RAGは、専門レポートの作成、最新データにもとづく資料作成、複雑な問い合わせ対応などで、知識アクセスの効率化に貢献しています。企業内のドキュメントやFAQを対象にすると、必要な情報を素早く見つけられるようになり、ナレッジ共有の基盤が整います。
CAGは、高速性とコスト効率を武器に、カスタマーサポート自動化や社内ヘルプデスクの効率化で実績が出ています。定型レポートの作成や繰り返しのデータ入力にも応用でき、担当者はより難しい業務に集中できます。ECの商品案内や予約システムなど、即時の応答が前提の場面では特に効果的です。
今後は、RAGがテキストに限らず画像や音声なども扱うマルチモーダル対応を広げ、文脈を踏まえた高度な検索・最適化が進むと考えられます。CAGは、長文脈モデルの普及に伴い、より多くの情報を手元に保持できるようになり、適用範囲が広がります。最終的には、RAGで最新情報を取得し、CAGで頻出情報を高速に参照するなど、両者を場面に応じて組み合わせる設計が中心になるはずです。
FAQ
Q: RAGとCAGは、生成AIの「賢さ」をどう高めますか?
A: RAGは最新の外部情報を参照して回答を作り、知識を最新に保ちます。CAGは頻繁に使う情報をあらかじめ用意しておき、応答速度と効率を高めます。
Q: RAGのアプローチは具体的にどう動きますか?
A: 質問ごとに外部の情報源から関連情報を検索し、その結果を基に回答を生成します。常に新しい情報を参照できます。
Q: CAGのアプローチは具体的にどう動きますか?
A: 利用頻度の高い情報や不可欠な情報を、AIが参照しやすい一時的な記憶領域(コンテキストウィンドウ)にあらかじめ用意し、そこから素早く回答します。
Q: RAGの主なメリットとデメリットは何ですか?
A: メリットは、最新かつ幅広い情報を参照できる点です。デメリットは、外部検索に時間とコストがかかる点です。
Q: CAGの主なメリットとデメリットは何ですか?
A: メリットは、高速で低コストに回答できる点です。デメリットは、一度に保持できる情報量に上限があり、常に最新とは限らない点です。
Q: どんな場合にRAGが適していますか?
A: 最新性や広い知識が必要な場合です。たとえばニュース記事の作成、市場動向にもとづく分析、専門分野の最新動向を踏まえた回答などです。
Q: どんな場合にCAGが適していますか?
A: 応答速度を重視したい場合やコストを抑えたい場合です。企業内FAQ、定型的な問い合わせ、繰り返し参照されるマニュアルなどに向いています。
Q: どちらか一方だけ使えば良いのでしょうか?
A: いいえ。特性を理解し、目的に応じて使い分けたり、両者を組み合わせたりするのが実務では効果的です。
参考
- Cache-Augmented Generation (CAG): The Next Frontier in LLM Optimization
- Don’t Do RAG: When Cache-Augmented Generation is All You Need(Qiita)
- Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks
- Retrieval Augmented Generation (RAG) in Azure AI Search
- What is a context window?(IBM Think)



