キーワード解説

開発略語大全:テック略語をジャンルごとに解説するよ

開発の現場で飛び交う略語は、ただの省略ではなく、「どう考え、どう働くか」を共有するための文化的な合図でもある——というわけでここでは、プログラマーやデータサイエンティスト、AIエンジニア、デザイナーたちが日常的に使う略語を、ジャンルごとにまとめてみました。


GitHub / Git で使われる略語

チーム開発の中心であるGitやレビュー文化から生まれた略語には、
短くても「状態」や「意図」を明確に伝える工夫が詰まっている。

略語 意味(英語) 由来・使われ方
WIP Work In Progress 作業途中のPRやコミット。「まだマージしないで」のサイン。
PR Pull Request 変更内容を共有してレビューを依頼する仕組み。GitHub文化の核。
LGTM Looks Good To Me レビューでの承認コメント。「OKです」の簡潔な表現。
SGTM / SGTM 👍 Sounds Good To Me LGTMよりカジュアルな合意表現。
PTAL Please Take A Look レビュー依頼時の定番。SlackやPRコメントで。
nits Nitpicks 細かい指摘。修正必須ではない軽いコメント。
FYI For Your Information 「参考までに」。情報共有の定番フレーズ。
IMO / IMHO In My (Humble) Opinion 「個人的にはこう思う」。意見をやわらかく伝えるときに使う。
RFC Request For Comments インターネット標準化の文化に由来。提案や仕様のたたき台として使われる。
RFR Ready For Review 「レビューできる状態になりました」という宣言。
ACK / NACK Acknowledge / Not Acknowledge 承認/非承認を示す。通信プロトコルの用語が転じたもの。
RTFM Read The F*cking Manual 「まずはドキュメントを読もう」という、少し皮肉を込めた古典的ジョーク。
OOT / OOO Out Of Topic / Out Of Office 議題外・不在通知などで使われる。
TBR To Be Reviewed 未レビューのままマージする際の明示。チームメンバーに対して「これから誰かがレビューする必要がある」と伝える。

設計思想・開発原則系

コードの「美しさ」や「再利用性」を重んじる考え方をまとめた略語。
議論の中で一言出すだけで、開発方針を共有できることが多い。

略語 意味(英語) 背景・使われ方
DRY Don’t Repeat Yourself 「重複を避けよう」。再利用性を高める基本原則。対になる概念は WET(Write Everything Twice)。皮肉的に「同じことを繰り返す」文化を指す。
KISS Keep It Simple, Stupid 「単純にしよう」。複雑化への警告として使われる。一方で「Cleverness(賢さ)」を追いすぎると破綻する、という反省も含む。
YAGNI You Aren’t Gonna Need It 「その機能、きっと使わない」。過剰設計を避ける合言葉。
SOLID 5つのOOP原則(Single Responsibilityなど) オブジェクト指向設計の定番原則群。
GRASP General Responsibility Assignment Software Principles 責務を明確に分担するための設計理論。
NFC No Functional Change 機能に影響しない修正。リファクタリング時の注記。
OOTB Out Of The Box 「箱から出してすぐ使える」。ユーザー体験を重視する考え方。
TBD To Be Determined 未決項目。仕様書やコードコメントで頻出。

プロジェクト運営・スタートアップ文化系

スピード重視の開発現場では、実験と検証を繰り返す文化がある。
そこから生まれた略語は、意思決定の速さを象徴している。

略語 意味(英語) 使われ方・背景
MVP Minimum Viable Product 最小限で動く試作品。まず出して検証するという考え方。
PoC Proof of Concept 概念実証。研究開発でもよく使われる。MVPの前段階、実験的段階。
ETA Estimated Time of Arrival 完了予定時刻。進行共有で使われる。
OKR Objectives and Key Results 目標管理の手法。Googleで使われており、広まった。定性的な意志と定量的な結果を結ぶ。
TL;DR Too Long; Didn’t Read 「要するに」。長文を短くまとめるときに使う。
TIL Today I Learned 「今日学んだこと」。小さな学びを共有する文化。
HOTFIX Hot Fix 緊急修正。通常のCI/CD手順をスキップして反映する場合もある。リリースを止めずに火消しを行う文化。

AI・データサイエンス文化の略語

AI研究や実装では、理論や技術を指す略語が頻出する。
論文・会話・コードコメントなど、あらゆる場所で見かける。

略語 意味(英語) 由来・使われ方
ML / DL / RL Machine / Deep / Reinforcement Learning 機械学習・深層学習・強化学習の3分野。
NLP / CV / ASR Natural Language Processing / Computer Vision / Automatic Speech Recognition 言語・画像・音声の主要領域。
LLM Large Language Model GPTやClaudeなどの大規模言語モデル。
RAG Retrieval-Augmented Generation 検索と生成を組み合わせたAI手法。
LoRA Low-Rank Adaptation 軽量で効率的なモデル微調整技術。
SFT / RLHF / DPO Supervised Fine-Tuning / Reinforcement Learning from Human Feedback / Direct Preference Optimization モデルを人間の好みに合わせて調整する主な方法。
E2E End to End 入力から出力まで一貫して処理を最適化するアプローチ。
OOM Out Of Memory メモリ不足エラー。特にGPU使用時によく起きる。
RNN / CNN / Transformer Recurrent / Convolutional Neural Network / Transformer ニューラルネットの主要構造。AI技術の進化の系譜を示す。

運用・インフラ・SRE文化の略語

「壊れないシステム」を目指すエンジニアたちの言葉。
信頼性を測るための文化として発展した。

略語 意味(英語) 解説
SRE Site Reliability Engineering 運用と開発を統合した職種。Google発祥。
SLA / SLO / SLI Service Level Agreement / Objective / Indicator サービス品質を数値で管理するための指標。
CI / CD Continuous Integration / Deployment 自動ビルドとデプロイの仕組み。DevOps文化の中心。
DevOps Development + Operations 開発と運用の協調を目指す考え方。
IaC Infrastructure as Code インフラをコードで管理する手法。
K8s Kubernetes “K”と“s”の間に8文字あることから生まれた略称。コンテナ運用の代表格。
LTS Long Term Support 長期サポート版。安定性を重視するバージョン。

日常的に使われるテック略語

チャットやミーティングでも自然に登場する略語は、
専門用語というより、チームの「共通語」として定着している。

略語 意味(英語) 背景・使われ方
WTFs/min WTFs per minute 「1分あたりの“なんだこれ”数」。もともとはゲーム用語。コード品質をジョークで測る言い回し。
AFK Away From Keyboard 離席中。Slackなどのステータスで使われる。
TBD / TBA To Be Determined / Announced 未決・未発表。進行中の議題でよく使われる。
BTW / FWIW / TL;DR By The Way / For What It’s Worth / Too Long; Didn’t Read 話題転換・補足・要約など、会話をなめらかにする前置き語。
ETA / EOD / EOW Estimated Time of Arrival / End of Day / End of Week 「完了予定」「今日中」「今週中」など、スケジュール感を共有する言葉。

略語は思考のリズムそのもの

開発者にとって略語は、単に効率を目指し、時間を節約するための省略ではなく、理解と信頼を加速させるための共通語だともいえそうだ。「WIP」は進行を共有し、「LGTM」は合意を示し、「DRY」は美学を語る。

短い言葉で深く通じ合う。開発者の間で交わされるこれらの短い呪文こそ、コードを支える“もうひとつの言語体系”——なのかもしれないですね。

深水英一郎
小学生のとき真冬の釣り堀に続けて2回落ちたことがあります。釣れた魚の数より落ちた回数の方が多いです。 テクノロジーの発展によってわたしたち個人の創作活動の幅と深さがどういった過程をたどって拡がり、それが世の中にどんな変化をもたらすのか、ということについて興味があって文章を書いています。その延長で個人創作者をサポートする活動をおこなっています。
データ分析・AIの専門家集団 GRI