雑談

ミレニアル世代を刺激する!?『啓発系』商品が熱い!

9月末、とある高校アメフト試合で逆転優勝をおさめたチームのワイド・レシーバー選手の試合後インタビューが、全米に旋風を巻き起こした。いくらアメフト好きのアメリカ人とはいえ、テキサス州のとある街の高校の試合後インタビューなど、地元の人かよっぽどハードコアのアメフト・ファンでもなければ気にならないだろう。ところがこの選手のインタビューでの発言があまりにも素晴らしすぎて、いわゆるバイラルビデオとして数日間で一気に全米中に広まったのだ。

普通、試合後のインタビューなど、プロ選手でさえ「大変ですけど頑張りました」とか「チームの力のおかげです、ファンの皆さんのおかげです」みたいなテンプレート的なコメントが出てくるのが普通だ。だがこの高校生、アポロス・ヘスター(Apollos Hester)は、記者がたずねた「逆転優勝の決め手は?」という簡易な質問に、爽やかな笑顔を浮かべて以下の要旨の回答をした。

『はい、僕達のチームは始めはゆっくりとしか進めませんでした。でもいいんです、だって人生だって時々うまくいかずにゆっくりすることがあるでしょ?それと一緒です。なので僕達は「大丈夫、今はゆっくり進んでるけど、最後は決める。今の得点が何点だろうが関係ない、最後は絶対決める」そう言い聞かせてました。実際、前半は相手チームにやられてました。完全に封じ込められたわけじゃないけど、ジワジワきてました。でもガッツと前向きな態度なんですよ。前向きな態度さえあれば何事も成功するんです。コーチがまさにそう言ったんですよ。コーチは「これはタフな試合だ。タフで辛い試合だ。でも御前達はフィールドに出て、戦って、自分のためだけでなくチームのため皆のために戦うんだ。それで勝つんだ」そう言ったんです。で、僕達はそれを信じたんです。本当に信じたし、それを信じられるって本当に素晴らしい気持ちなんです。それを信じて、全ての努力を投入すれば、どんな状況でも、スコアボードがどんな得点を示していても、何でも成功できるんです。でももし成功しなくても、それでもいいんです。またひたすら戦い続けるんです。笑顔を絶やさず戦い続けるんです。なんて素晴らしいことでしょう。』

このあともさらに「人生山あり谷ありだけどうまくいくから大丈夫」的スピーチは2分間とめどなく滔々と続き、自己啓発セミナーもびっくりの、士気を鼓舞する感動的な激励スピーチを行ったのだ。

アポロ・ヘスターのインタビュー

(オリジナルの伐採をインタビュアーがYoutubeにポスト)

アポロ・ヘスターのインタビュー

このビデオを見てふと気づいたのだが、アメリカは今、こんな風に感動的というか士気を鼓舞するというか激励というか啓発的というか、いわゆるインスピレーショナル(Inspirational)、モチベーショナル(Motivational)と言われるモノが巷にあふれ出ている。

たとえばこの買い物袋。これはLululemonというヨガやジョギングなどスポーツウェア専門ブランド店の買い物袋だ。ふつう、店の買い物袋といえば、店の名前と店のロゴが記載されてるのが関の山だ。ところが、これは、「毎日1つは自分が苦手なことに挑戦しよう」「ポジティブに考えよう」「お金より友達の方が大事」といった、背中をポンと押してくれるような激励文、精神が鼓舞されるような引用・格言でビッシリ埋められている。Lululemonは特に若い女性に人気のブランドなのだが、店舗に行くと、上記のような文句の壁掛けアートが店内のあちこちに掛かってもいる。

また、若者に支持される全米チェーン展開のサンドイッチ屋ジミー・ジョンズ(Jimmy John’s)やポットベリー(Potbelly)などに行けば、これまた壁に「誰も見てないかのように踊れ」「金など関係ないかのように働け」などといった啓発文句アートが掛かっている。

このように小売店が激励・啓発ものを絡めてくるのは、ポジティブな店舗体験を演出するためなのかな、とも想像できる。商品を選んでる最中やレジで会計を待ってるあいだにふと目をやると心が暖かくなるメッセージがアート感覚で掛かってる。それを見て前向きな気持ちになったり良い気分になったりしたら、この店=良い気分になれる店みたいな錯角を生み出せるし、楽しい気持ちが引き金となり衝動買いしてもらうことも可能かもしれない。

ところがこの手の激励・啓発ものは、小売店の装飾のみにとどまらない。こじゃれた店のインテリア雑貨コーナーにいけば、激励文句のきざまれたクッションや、啓発文句が印刷された壁掛けアート、マグネット、カードなどが売られている。

アメリカでは人気の家具屋ポッタリー・バーン(Bottery Barn)でさえこんな壁掛けアートをカタログで紹介している。

つまり、こんなのが消費者向けにも売られているのが今のトレンドのようなのだ。

世界金融恐慌の煽りをいまだに軽くひきずっているアメリカ、そこに持ってきて、天災、テロ、伝染病など胸が暗くなるニュースの多いなか、そんな世相がこういう気持ちの鼓舞作用ををインテリアにまで見出してるということも考えられる。

または、いまどきの若者層、俗に言うミレニアル世代の特徴的に、こういうのが共感を呼ぶのかもしれない。

『ミレニアル世代との働き方』なるセミナーに参加した職場の上役によると、この世代の人たちは、他の世代の人たちと比べて、士気を保つために頻繁なフィードバックとささやかなタスクにでも評価賞賛を臨んでいるとかいうことらしい。

本当にそういう生態なのであれば、部屋の中にも自分を四六時中鼓舞モードにしとけるような何かがあるとイイなという、この世代を中心とした消費者ニーズからこのようなネオ激励アートが生まれトレンドとなった……という見方もアリ、だろう。

これなんか、日本でも簡単に応用可能なので、試されてはいかがだろうか?「止まない雨はない!」「失敗しても次がある!」「いつも笑顔でいればきっと良い事あるよ!」みたいな気持ちの上がるメッセージを、こじゃれたフォント体でプリントアウチしてこじゃれた額縁に入れて飾り、商売屋さんであれば客足が伸びたり客単価が上がるか、また個人の皆様におかれては、月曜から金曜まで快調に働けるか様子を伺ってみてはいかがだろうか?何か成果のようなものがあったら、ぜひご報告ください。