REPORT
栃木県における事業系食品ロス削減対策実証事業における予測AIの活用|イベントレポート
2024年11月29日、RED° TOKYO TOWER(東京・港区)にて、DX担当者向けセミナー「【あらゆる業界必見】3ヶ月でAI実装を実現!大手製造業から学ぶ 現場が動くDXの極意〜90日間の無料アカウントで実践できるハンズオン付き〜」を開催いたしました。 本セミナーは実データを駆使したAI活用から得られる知見や洞察を参加者同士で情報交換できるイベントとして実施し、多くの皆様にご参加いただきました。
東日本電信電話株式会社(現:NTT東日本株式会社)、栗田工業株式会社、エクスチュア株式会社の各ご担当者様にご登壇いただき、予測AI & 生成AIを活用した事例をご紹介いただき、弊社、株式会社GRIからも生成AIとデータ基盤構築の事例についてご紹介いたしました。
本イベントレポートでは、東日本電信電話株式会社の吉田健二氏が発表された「栃木県事業系食品ロス削減対策実証事業における予測AIの活用」の事例をわかりやすくご紹介いたします。
本セッションでは、栃木県が推進する食品ロス削減の取り組みの一環として実施された実証事業について紹介されました。アイスクリーム類および氷菓などを製造販売する株式会社フタバ食品(以下、フタバ食品)において、予測AI「Forecast Flow」を活用した需要予測により、仕入れ・製造・配送の最適化を実現し、食品ロス削減と経営改善を目指した成果についてご共有いただきました。
吉田健二氏
東日本電信電話株式会社 ビジネスイノベーション本部
※法人名、役職、内容などは2024年11月時点の情報です。
実証事業の背景と目的
国内では年間272万トンもの食品ロスが発生しており、これは国民一人あたり茶碗一杯分のご飯の量に相当します。そのうち、食品関連事業者から発生する「事業系」食品ロスは全体の約半分を占めています。栃木県内では、平成30年度のデータで年間12万トンの食品ロスが発生しており、その約6割が食品関連事業者によるものです。
このような状況を受け、栃木県庁は事業系食品ロス削減を目的とした実証事業を2022年度から推進しており、2024年度は食品製造業を対象にフタバ食品が協力事業者として選定されました。本事業の目的は、フタバ食品における食品ロス削減プログラムの取り組みを通じて、食品ロス削減効果と経営改善効果を実証し、その成果を県内の同業者へ横展開すること、そして栃木県全体の食品ロス削減の気運醸成を図ることです。
実証事業の体制とNTT東日本の役割
本実証事業は、栃木県庁がプロジェクトマネージャーを務め、フタバ食品が実証事業を実施する体制で進められました。NTT東日本は、特に需要予測のAI開発・分析支援を担当しました。NTT東日本グループは、地域循環型社会の共創をパーパスとして掲げており、食品業界における食品ロス削減を重要課題と認識し、AI活用による解決に貢献したいという思いから本事業に参加しました。
予測AI「ForecastFlow」の採択
今回の事業では、得られた成果を同業者へ横展開するため、導入が容易なクラウドサービスの利用が必須要件でした。NTT東日本は複数のサービスを比較検討した結果、本事業の要件に最も合致するとして「ForecastFlow」を選定しました。選定理由としては、月ごとの契約期間、API利用可能性、複数モデル・複数ユーザーでの利用可否、などコストメリットにあった使い方ができる部分が一番の選定理由になりました。

アイスクリームの販売数と気温の関係
アイスクリームのような氷菓商品は、気温と販売数に強い相関関係があることが先行事例から示されています。気象庁の資料によると、平均気温が15℃を超えると販売数が徐々に増加し始め、25℃を超えると急激に販売数が増加するという報告があります。

フタバ食品の主力商品である「サクレレモン」においても、この傾向が確認されました。平均気温と出荷数の散布図およびForecastFlowを用いた部分依存グラフから、25℃〜26℃を超えたあたりから出荷数が急増する関係性が明らかになりました。この結果に基づき、NTT東日本は気温を主要な特徴量(説明変数)の一つとして出荷数予測が可能であると判断し、出荷数予測モデルを構築しました。

出荷数予測モデルの構築とシステム概要
構築された出荷数予測モデルは、出荷数を目的変数とし、過去の気温予報やカレンダー情報を主な説明変数としてForecastFlow上で予測モデルを構築しました。実証期間中、日々出荷数を予測する必要があったため、未来のカレンダー情報と気温予報を入力することで、日々の未来の出荷数を予測する簡易的なシステムが構築されました。
予測の対象商品はサクレレモン以外にも複数ありましたが、今回の報告ではサクレレモンのデータが中心でした。予測の粒度は週別で、フタバ食品の各営業所エリアごとの合計出荷数が対象とされ、2週間先までの予測が行われました。実証期間は2024年6月から9月までで、主に2週目の予測が評価対象となりました。

実証結果① 出荷数予測精度の改善
フタバ食品では従来、昨年度の実績をベースに販売計画を策定していました。今回の実証では、ForecastFlowによるAI予測と昨年度実績、実際の出荷数を比較検証しました。
結果として、AIを活用した出荷数予測は、昨年度実績と比較して、平均して17%の予測精度が改善されることが確認されました。出荷数予測では気温予報や当年度の状況をより正確に反映できるため、実績値により近い予測が可能となりました。

実証結果② 経済効果の検証
出荷数予測がもたらす経済効果を検証するため、営業拠点間の在庫移動に関するシミュレーションが行われました。AIが予測した販売予測と、従業員が昨年度実績に基づいて立てた販売予測に基づき、工場で生産された製品を全国7拠点の営業拠点へ振り分けるシミュレーションを実施。在庫が不足した拠点間で在庫移動が必要となるケースを比較しました。
このシミュレーションの結果、AI予測を用いた場合は10トントラック8台分の在庫移動を削減できることが示されました。これは経費として約160万円相当の削減効果に相当します。
さらに、従業員による予測では実績値の乖離率が5%であったのに対し、AI予測では乖離率が3%に改善されたことも確認されました。

今後の展望
本実証事業における食品ロスの削減効果と経費節減等の経営改善効果の結果等をとりまとめた成果報告資料は、現在以下のURLにて公開しています。
https://www.pref.tochigi.lg.jp/d05/houdou/r6foodlossjissyouhoukoku.html
今後この成果について同業者へ横展開を行い、県内の事業系食品ロス削減機運の醸成を図ります。
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