ETHNOGRAPHY
新しいマーケットを築け!-今までにない”文化系”のガールズバー
昔、バーテン修行してた頃の同僚で、すごく優秀な料理人がいたんですね。彼も僕が独立した後に独立して、8席だけのすごく小さい和食店を始めました。そのお店は毎日コース一種類のみで、ちょっと飲んで一人1万円くらいのお店でした。なんと毎日通ってくる常連のお客さまもいたそうなので、毎日違う料理を季節にあわせて用意するという本当に丁寧な仕事をする料理人だったんです。
その小さいお店が立ち退きになり、彼の人生が変化し始めました。元々、高い単価のお店だったので、そういう高い価格設定でも美味しければ喜んで来てくれるようなお客さまをたくさん抱えていたんですね。
それで、今度は自信を持って、港区の方に大きいお店を構えました。するとやはり港区、たくさんのマスコミ関係の方や、モデル事務所を経営するなんて方も集まりお店は繁盛しました。
その彼がなんとガールズ・バーを始めたんです。そしてなんとそのガールズ・バーもあたり、今は3軒も経営してて、ムチャクチャ儲かってるらしいんですね。
で、彼に儲かるコツというのを教えてもらいました。
まずそれ以前のお店で仲良くなったモデル事務所の社長と話し合い、契約して、まだそんなに仕事が多くないモデルの女の子に来てもらっているらしいんです。
さらに、他のガールズバーはお酒やオツマミの種類とか内容とかがキチンとしていないらしいんですね。でも来店するお客さまは「美味しいもの」をたくさん知っている方たちが多いらしいので、そのお酒やオツマミを本格的に用意してるらしいんんです。
そして、さらに周りの競合店よりも、少しだけ安くするらしいんですね。他にも「店長の決め方」とか「トラブル回避問題」とかここではちょっと書けないようなポイントは色々あるのですが、まあまとめて言ってしまうと結構、儲かりそうなんですよ。ガールズバーって。
それで彼に「え、そんなに儲かるんですか。じゃあ、僕もやってみたいなあ」って軽口をたたいちゃったんです。
そしたら、「え? しんちゃん(僕のことです)、無理だよ。ダメな女の子に『おまえクビ、今すぐ帰れ!』って怖い顔で言わなきゃいけないんだよ。しんちゃん、女の子に優しいから無理でしょ」と言われました。確かに、それは言えなさそうです…
それでも色々と、「どの辺りを攻めたら誰も思いつかなかった儲かるガールズバーが可能かなあ」と考えてみました。
それで思いついたのが、「文化系ガールズバー」ってどうでしょうか?
まず、お店で働いている女の子はいつか女優になりたかったり、ミュージシャン志望だったり、映画や美術に詳しいマスコミ業界志望のサブカル系の綺麗な女の子たちなんですね。
で、名札に「映画好きです。憧れの女優はヘップバーン」とか、あるいは「バンドやってます。ベース担当です」とか、「写真やってます。たまに個展やってます」って感じで書いてあるんです。
そしてお客さまは、30代から50代で実力もある文化系マスコミ関係の成功者たちでお金もたくさんあるし、もしかして会社の経費で飲めたりします。
彼らは映画や出版、音楽やIT関係なので、その女の子たちに「あの映画、観た?」とか、「俺が若い頃はこういうバンドが流行っててね」とか、「村上春樹さんとは一度仕事したことあるよ」とか、「あのアプリは僕が若い頃、友人と二人で作ったんだよ」とかって会話を楽しむんです。
で、もちろん彼女たちは「いつかデビューして有名になろう」とか「自分が書いている記事を本にしたい」とか思っているので、「私、演劇やってるんです。今度、一回見に来てくださいよぉ」とか「ええ? 渡辺さん、あの雑誌の編集してるんですか? 今度、私の文章も使ってくださいよぉ」なんて言うわけです。
もちろん、そのお客さま達も「あ、じゃあ今度CMの仕事している友達連れてくるよ。なんか良い話があるかもしれないから」なんて言って、彼女たちも「お願いしますぅ」とか言うわけです。
ほら。需要と供給がぴたっとはまって流行りそうじゃないですか。
ポイントは絶対に「ガールズバー」だってことを、働いている女の子にも、男性のお客さま達にも気づかせないというところです。
だって、彼女たちは「そんなガールズバーなんて」ってプライドがありますし、そういう文化系業界人も「ガールズバーだ」ってわかったら、通うのが恥ずかしく思うからです。
外から見た印象としては「シャンパーニュ専門のバー」とか「すごく上品な和食とちょっと入手困難な日本酒が楽しめるバー」といった感じが正解だと思います。でも本当は「文化系ガールズバー」なんです。
だからお店の名前も「バー・ノルウェイの森」とか「バー・ミツバチのささやき」とかにするわけです。
どうですか? あたると思うんですけどねえ…
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著者について
林 伸次
林 伸次 1969年徳島県生まれ。中古レコード店、ブラジルレストラン、バー勤務を経て、1997 年渋谷にbar bossaをオープンする。選曲CD、CD ライナー執筆多数。『カフェ&レストラン』(旭屋出版)、『cakes』で、連載中。著書『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか? 僕が渋谷でワインバーを続けられた理由』(DU BOOKS)
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