ETHNOGRAPHY

有料でもいい。本物を読ませてほしい。– インターネットでもプロの文章を!

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渋谷 Bar Bossaのマスターが、カウンターの中から観察した世の中の“不便”に斬新なアイデアを提案する連載!

 

先日、ネット上で、僕のある友人の料理が批判されていました。

その友人、本当は全く違うジャンルなのですが、話をわかりやすくするために「イタリアン・レストラン」のシェフをしていることにしますね。

で、その投稿者はかなりグルメであることを自負していまして、どの投稿を見ても「シャリが口の中に入れるとホロっと崩れる感じが」とか、結構、語っているんです。
そして、その投稿者がその僕の友人のカルボナーラについて「本来カルボナーラというモノは云々。ここのシェフはそれを全く知らないのか云々」って批判していたんですね。

Photo by Eric McGregor

Photo by Eric McGregor

で、僕の友人のその料理人に「カルボナーラ、批判されてたね」って言ってみたら、「ああ、それ読んだよ。なんか色んな人に言われるんだよね。林くんもああいうの読むんだね。でもあれ、書いた人が全然わかってないんだよ。ちゃんとイタリアで修行した人ならみんな『この人わかってないなあ』って気がつくから大丈夫」って答えたんです。
まあ考えてみたら、その友人の料理人は専門書的なレシピ本も出しているし、自分の料理に自信もあるし、ああいう素人のグルメ家が書いた記事なんて全然気にならないんだなあと思いました。
 

先日、ある友人が「引っ越しで本を処分しなきゃいけないんだけど、雑誌が捨てられないんだよね」と言ってました。

ええと、雑誌って一番最初に捨てるものですよね。それが捨てられないって理由を聞くと、こういう答えでした。
「雑誌以外の書籍って処分してしまっても、よほどのレアな本じゃない限り、また入手可能なんだよね。でも雑誌って一度捨てちゃうと、もう2度と読めないってことあるんだよ。トランジットとかそういうちゃんと取材してて写真も綺麗な雑誌って捨てると後でその国に旅行しようとかって時、後悔するんだよね。でも雑誌って場所とるしねえ。引っ越し先にまで持ってくべきかどうか悩むよね」

Photo by brewbooks

Photo by brewbooks

なるほど。確かに僕も今、個人的に以前、BRUTUSがバー特集をやった号を捨ててしまって後悔しているんです。

最近、思うことあって、いろんなバーをもう一度回ってみようかなと思うのですが、BRUTUSのあの特集が良かったので、あれを参考にしながら回りたいんですね。

でも、もちろん雑誌って場所をとるからいつの間にか処分してしまってて、手元に残っていないんです。

それで、検索してあのときのBRUTUSの特集のような記事がネット上にないかなと思うのですが、素人の方が突発的にバーに行って、感想を書いている記事は山のようにあるのですが、本物の食専門のライターが一定の編集の基準で、東京の全部の地域を網羅して、ちゃんと取材をしたバーの記事ってやっぱりないんです。

古本屋さんで探して、もう一度あの号のBRUTUSを買えば良いのですが、BRUTUSのある号だけを見つけるのってかなり困難ですよね。結局、邪魔になってまた処分してしまいそうですし。
                

そこで最初の話に戻るのですが、インターネットってやっぱり僕の友人の料理人を批判していた人みたいに、「食の仕事を専門にしているわけではない素人の方」が趣味で書いているというのが圧倒的に多いんです。

でも、やっぱり雑誌のようにちゃんと編集者が入って、ちゃんと取材をした記事をインターネット上で僕たちは読みたいんですよね。そちらの方が信憑性が高いです。上のカルボナーラの件のようなことはまずありえないですし。
でも、「食を専門にしている職業ライターの方」はインターネットは「無料が原則」であったり、原稿依頼を受けてもすごくギャラが少なかったりするので、あまり進んでは書かないんです。

Photo by Markus Spiske

Photo by Markus Spiske

もちろん、インターネット上にも、ちゃんと取材をして、丁寧な記事を作っている人たちはたくさんいると思います。

でも、僕が必要としているジャンルには、あまり見かけられないんですよねえ…

やっぱり有料でやっていくのが一番なのではないでしょうか。

僕が読みたいのは「飲食店評論」と「音楽評論」です。

「飲食店評論」は☆とかつけなくて良いので、蕎麦なら蕎麦専門のライターさんが日本中のお蕎麦屋さんを、片っ端から丁寧にお店の人にもお話を聞いて、オススメのお料理なんかも紹介したものとか、「新店舗特集」みたいに「雑誌感覚をひきずったもの」が良いです。

「音楽評論」はやっぱり「雑誌感覚をひきずったもの」で「クラウス・オガーマン特集」や「夏に聞きたいボサノヴァ特集」とかもありながら、新譜も真剣に切り込んだ感じのが読みたいです。

ちゃんとお金、払いますよ。

匿名の素人の方のカスタマーズ・レビュー、やっぱり玉石混淆です。そろそろインターネットで編集されたプロの方の丁寧な記事も読みたいです。

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■著者について

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林 伸次

林 伸次 1969年徳島県生まれ。中古レコード店、ブラジルレストラン、バー勤務を経て、1997 年渋谷にbar bossaをオープンする。選曲CD、CD ライナー執筆多数。『カフェ&レストラン』(旭屋出版)、『cakes』で、連載中。著書『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか? 僕が渋谷でワインバーを続けられた理由』(DU BOOKS)

■林さんご登場ページ

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