AIサービス契約はSaaS型の形式を取ることが多いです。
ここで、SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウェア(AIの学習済みモデルなど)をインターネット経由で提供する形態です。提供者が管理を行うため、利用者は自分でインストールや更新を行う必要はなく、常に最新の機能を利用できます。
AIサービスを提供する側も受ける側も、SaaS型契約の特性や基本事項の理解が重要です。ここでは以下のポイントを抑えていきます。
1)入力データの利用権 (例:追加学習への利用可否)
2)成果物の利用権・知的財産権 (例:学習済みモデルの著作権と利用権)
3)個人情報保護とセキュリティ (例:機密情報の漏洩対策)
4)責任範囲 (例:精度保証、運用・保守の体制)
今回の注目:成果物の利用権・知的財産権
学習済みモデルの知的財産権は、一般的に、ベンダー側)に帰属します。ただし、契約内容によっては、ユーザー企業との権利の共有や、一部利用権の付与が行われる場合もあります。
また、既存モデルに対して追加学習(ファインチューニング)を行った場合には、生成された新たなモデルの権利は基本的に、元のモデルの権利関係を引き継ぐ形になります。
しかし、「学習済みモデルをどこまで利用できるのか」、に関しては、ベンダーとユーザーは契約によって相互に制限を課すことがあります。契約の中では、学習済みモデルや開発ノウハウの再利用範囲(改変可能か、他社提供可能かなど)について、権利関係を定めておく必要があります。
具体例を通じて理解を深めていきましょう。
【課題1】一度作ったモデル資産を、他でも再利用すること
- ベンダーBが、顧客A向けに専用の画像認識モデルを開発した
- ベンダーBがユーザーAのデータを、モデルの追加学習に使用したい
- ベンダーBが、学習済みモデルやその開発で得られたノウハウを、自社サービスや別の顧客向けサービスに転用したい
ここで、ベンダー(AI 開発会社)が、ユーザー企業に対して確認すること:
- 「A様のデータを使って、既存モデルを追加学習してよいですか?」
- 学習済みモデルの構造(特に汎用部分)の一部や学習ノウハウとを、別企業向けSaaSに活用してもよいですか?」
しかし、ユーザー企業側は、自社知的財産の侵害や競争優位性喪失、さらには機密情報の漏洩などを懸念することが考えられます。
そこで、契約では、上記の課題に対し、「ユーザーデータを使って追加学習してよいか」「成果物の何をどこまで再利用してよいか」、「特定のデータの除外・匿名加工の必要性」などに関する合意を、契約の中で両者の間で形成します。
【課題2】ベンダーがユーザーに一定の権利を付与する
これは主に、ユーザー企業が、モデルを自社内で継続定期に再利用したい(ベンダー変更後でも)場合です。合意を形成するためには、学習済みモデルの使用権、複製権、改変権、ソースコード閲覧権、API利用権といった権利を部分的にベンダーからユーザーに、契約上で付与する必要があります。
また、ユーザー企業が、学習データや業務のノウハウの提供など、開発に顕著な貢献をしている場合に、ある意味で「共同開発」とみなされ、この場合、ベンダーから学習済みモデルの一部の権利をユーザーに共有することがあります。



