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年末裸族

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そして、僕がリビングに戻ると
百の屁(同級生)君は、全裸になっていた。
 
たった二人の差し呑みなのに、である。
 
しかも、そこは僕の実家であり、
数十歩先の部屋では僕の両親が寝ているのに、である。
 
「こいつ、何にチャレンジングしているのだろう」
 
と思ったが、ここでリアクションするのも癪なので
何事もなく接した。
 
百の屁君は、僕のノーリアクションに、
さらにノーリアクションを被せてくる。
 
「なるほど、そういうことね」
 
僕は、百の屁君の挑発を感じ取る。
 
すると、百の屁君は僕を畳み掛けてくる。
 
「あー、フォルテシモ歌いたくなってきたわ」
 
とケツをボリボリやる。
 
メガネ+全裸。
しかも、人の実家で。
さらに、フォルテシモ歌いたくなるとは、
どんだけポジティな野郎だ。
 
あたりを見渡すと、百の屁君の脱いだパンツとシャツはきちんと
畳まれて、ソファの上に置いてある。
 
さすが、泥酔してても「几帳面のA型」である。
 
僕ら二人の「リアクションしない」チキンレースは続く。
 
僕がとっくりセーターフル装備。百の屁君が全裸。
という形で、平然と二人で酒を呑む。
 
まさに、笑ってはいけない。
である。
 
片膝立ての百の屁君の、玉袋が、片膝に張り付いている。
岩貝である。

百の屁君の玉袋
 
ククッとなる。
 
「ダメだ、ここで笑ったら。ここで全裸であることを認めたら、俺の負けだ」
 
その日は、12月31日。あと10分でハッピーニューイヤー、年が明ける。
 
年が明けたら、この戦いノーサイドにしよう。
 
百の屁君は、ソファに膝をついて、フォルテシモを歌いだす。
 
「愛が、すべてさ」
 
愛を語るんじゃない。
 
僕は、卑怯だと思ったがトイレに立つ。
 
「ちょっと、年納めしてくるわ」
 
いま、ここで両親が起きてきたらどうなるだろう。
 
しかし、これは、漢と漢の勝負である。
 
一歩も引けない。
 
今年も、残りあと5分。
この5分しのげば、ノーサイド。
 
僕は、小便し、心を整えてから、
リビングの戸を開けた。
 
すると、全裸の百の屁君は、
人の実家の冷蔵庫を平然と開けている。
 
「おい!」
 
僕が突っ込むと、百の屁は、少しダンディーな顔で言った。
 
「なんか、ナッツ的なものねえか?」
 
僕は、噴出してしまった。
 
ここで、ナッツを食いたくなるかね。
 
後で聞いた話だが、百の屁君は、すでに泥酔で記憶をなくしており、
一切、このことを覚えていなかった。
 
つまり、僕はひとりで勝負を挑まれたと思い
四苦八苦していたわけである。
 
まさに、一人上手。
 
10年ぐらい前の話であるが、
年末になると、必ず思い出しちまう。
 
ハッピーニューイヤーンバカーン、である。

 
 

(著者について)
10%(テンパー)。
実家は、秋田で比内地鶏放し飼いにより差別化を図るきりたんぽ屋。稼業を継がず東京へ出て数十年。現在の職業は広告系ディレクター。週末は、だいたいホッピーを飲みながら、赤羽近辺で面白人間を受信中。

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