COLUMN

NO.16 北千住の細道 ~日光街道、江戸の宿場の面影残す細道~ – 江戸東京細道散歩

column_bnr_kuroda

kitasenju

No.16 北千住の細道
日光街道、江戸の宿場の面影残す細道
        長さ およそ1.5キロメートル
              最狭幅 80センチメートル
歴史度 ★★★★
狭隘度 ★★★★
魅力度 ★★★★

 これまで15か所の細道を紹介してきたが、今回ほど人通りの多い細道はない。渋谷・道玄坂の細道もこんなに人通りはなかった。細道と言えば、人知れず裏通りにあるものが多いが、今回は繁華街の周りを行き来する生活道路で、今も生きている細道だからだ。

 千住の街が栄え始めるのは徳川家康が江戸に入ってから。1594年、隅田川に千住大橋が架けられ、1625年には日光街道の江戸から最初の宿場街となった。その後南に町を拡大し、今の南千住あたりまで千住宿になった。幕末には1万人ほどが住む江戸近郊最大の宿場だった。明治維新後は隅田川を境に行政区域が分かれ、隅田川の北が北千住と呼ばれるようになる。

 今でも旧日光街道の道筋は千住大橋付近から荒川近くまで残っており、しかも北千住の中心商店街として大いに賑わっている。江戸周辺の宿場では、品川や板橋も古い街道が残り商店も多いが、これほどの賑わいはない。だから北千住は現代の賑わいと、江戸の歴史とがはっきりと目に見えて残る貴重な街なのだ。

 さて近年見違えるように立派になった北千住駅西口歩行者デッキに出て、正面一番端に見えるエレベーターまで進もう。エレベーター、あるいはその脇の階段を降りるとすぐ前に細い路地がある。今は自動車もかろうじて通れるので厳密に言うと「細道」ではないのだが、写真を見てもわかる通り、かつてはめちゃくちゃ狭い通りだったのを、両側の建物がセットバックして、なんとか危険なく通れるようになった道だ。

北千住駅からまず入る通り。右側に千住最大の旅籠、中田屋があった

北千住駅からまず入る通り。
右側に千住最大の旅籠、中田屋があった。

 路地に入る手前、駅前からマルイの脇を通って北に行く道がある。これが日光街道に平行して続く東の裏道。この先に日光街道を過ぎた向こうにはやはり並行して走る西の裏道があり、この日光街道と東西の裏道の間に無数の細道が通じている。まるで無限に続くあみだくじのような街路の街が北千住なのだ。

 従って、北千住の細道をすべて歩くと日が暮れてしまう。今回は一番の中心地から、やや北にある千住ほんちょう公園までの選りすぐりの細道をご紹介する。ほかにも魅力的な細道が点在するのだが、それはご自身の目でご確認を。

 さて路地を進むとまもなく旧日光街道に出る。このあたりがかつての千住宿の中心だ。渡った路地の左手に案内板がある。

千住宿の案内板。左側の店のあたりが本陣。左右に通るのが旧日光街道

千住宿の案内板。左側の店のあたりが本陣。
左右に通るのが旧日光街道。

 案内板の向かいの一角、見ている背中側が本陣跡だ。街道に面して碑が建っている。案内板右手には見番(芸者の手配をするところ)があり、駅から入ってきた右側には、明治天皇も泊まったという中田屋という大きな旅籠があった。

 それにしても江戸時代の宿場街の構造をこれだけ残している街も珍しい。内藤新宿は道幅も変わり、区画整理された場所もあり、まったく宿場の面影はない。板橋はマンションなどビルが多く、細道があまり残っていない。品川は結構細道も残るが、海に面した宿場なので海側の細道があまりない。その点、北千住は中心の街道と2本の裏道がきれいにまっすぐ通り、高いビルも比較的少ない。

旧日光街道はえんえんとまっすぐ続く

旧日光街道はえんえんとまっすぐ続く

 道路脇の街路灯には、日光街道を使って参勤交代した大名の名と紋所、簡単な解説が書かれており、歩くのが楽しくなる。

千住宿を使う大名の名が街路灯の支柱に書かれている

千住宿を使う大名の名が街路灯の支柱に書かれている

 そのまま路地を通り抜けると西側の裏道に出る。ここはかつては川というか下水が流れていたらしい。右に曲がり、すぐに日光街道側に戻る路地があるので入る。ここは狭い。途中、隣の路地が見える隙間がある。なんとか人は通れそうだが、明らかに私有地。しかしこれは通路なのか? 何の障害物もなく、「通ってちょうだい」と手招きされているようだ。

家と家の間から隣の路地が見える。というか通れるぞ!

家と家の間から隣の路地が見える。というか通れるぞ!

 まもなく行き止まりに見えるが左右に道がある。この先も超絶細いが、生活道路だ。おじいさんが出て来てびっくりした。

石畳も残る細道。生活道路である

石畳も残る細道。生活道路である

 すぐに日光街道に戻り、左はす向かいのファミレス脇の道に入る。進むとマルイの脇に出て、さきほど入ったばかりの路地がすぐお隣だ。北に進んで、医院の看板の脇道に入る。植木鉢などもありさらに風情が増す。日光街道に出ると、左手はトタン塀のボロ屋。

 ところがである。

 このボロ屋(失礼!)なんと大正時代以前に建てられた元魚屋の建物で、今は「千住 街の駅」という観光案内所兼休憩所。様々なパンフレットが置いてあり参考になる。大きな冷蔵庫が残るが、中は今はパンフレット置き場だ。右手は植物が絡まりまくったよさげなカフェ。

 カフェの隣の道を東に戻る。このように一軒の家の両側が道、という場所も多い。入ると路地の入口はまあまあ広いが、途中で飲食店の看板がごろんごろんしていて通りを塞がれる。しかもひさしのようなものが道をほとんど覆っている。しかし右の注意書きは「駐輪禁止」で「通行禁止」でない。やっぱり通っていいのだろう。

ひさしと看板で圧迫された細道

ひさしと看板で圧迫された細道

 東裏通りに出て、また次の路地を街道に向けて戻る。今度の路地は未舗装。日光街道に出たら右はす向かいに入る。入口の店は一部レンガ造りだ。細道脇には木の引き戸の玄関。漬け物石のような境界石が脇にある。奥へ進むと石畳やら、未舗装の砂利道やら。さらに隣の細道に通じる抜け道もある。

 西裏通りに出て北に進むと千住本氷川神社。街道沿いには神社もお寺もないが、東西の裏通り沿いには実にたくさんの寺社がある。それぞれが江戸時代からの歴史を持ち、なかには最古いものもある。歴史散策をしても楽しい街だ。

 神社前の路地を入ると、脇には旅館、破風のある玄関の和風建築などが残る。街道沿いのコンビニ脇に出て、右はす向かいの見過ごしそうな細道に入る。東裏通りに出て折り返す通りはまた古色蒼然。脇には井戸があったのか流し場のようなものがあり、突き当たりに「茶処」との土蔵と屋根のある門。

「茶処」とある。表はお茶屋さんだった

「茶処」とある。表はお茶屋さんだった

 その脇は両側が空まで迫る北千住キャニオン状態で、昼なお暗い。

昼なお暗い北千住の細道

昼なお暗い北千住の細道

 出てみると先ほどの土蔵の表はやはりお茶の店だった。街道側の入口に注意書きがあり「生活道路ですので駐輪禁止」とある。やっぱり道路なのだ。

 またまた東にとって返すと今度は雰囲気が違う。「毎日通り飲食店街」というよくわからない名前の小路だ。

毎日通り飲食店街

毎日通り飲食店街

 小さなスナックのような店がごちゃごちゃっと看板を並べるが、驚くのは空。今時まだこんなことがあるのか、というくらい有線放送(?)の電線が蜘蛛の巣状に張り巡らされている。

よくまあこんがらがらずに張っているものである

よくまあこんがらがらずに張っているものである

 しかもそれが架かる電柱がまたレトロ。コンクリート製の神殿の柱のようなタイプで、見たところ数十年は経っていそうだ。この一角だけ、おそらく私設のこの電柱が何本か立っている。奥を曲がって右に行き、東裏通りを出たら、ゴールの千住ほんちょう公園は間近だ。

千住ほんちょう公園

千住ほんちょう公園

■細道を実際に散歩した動画です。
※黒田さんのナレーション付き!

細道とは
 ここで紹介する細道は、私・黒田涼の独断で選んだものだが、おおまかな定義は頭にある。
まず、表通りから見えにくく、歩く楽しみと驚きのある狭い道が条件。
自動車は通行できないが、公道もしくは近隣の生活道路として機能していること。
歴史が古く、曲がりくねってアップダウンがあればなおよい。

■著者紹介
黒田 涼(くろだ・りょう)

  • 作家・江戸歩き案内人
  • 大手新聞社にて記者を16年務めるなど編集関係の仕事に携わったのち、2011年に作家として独立。現代の東京に残る江戸の痕跡を探し出すおもしろさに目覚め、江戸歩き案内人として各種ガイドツアー講師などの活動も行っている。江戸と言われる範囲をのべ2000キロ歩いて探索。江戸の街の構造、江戸城はもちろん、大名屋敷、寺社、街の変遷などに詳しい。
  • 各種講座や講演講師、NHKはじめテレビ・ラジオ、新聞、雑誌などの媒体露出多数。「江戸城天守を再建する会」参事 専門委員。

■著書
※各書籍名はAmazon.co.jpへリンクされています

■講師歴

  • 「江戸城天守を再建する会」江戸ウオーク講師 2010年〜
  • 雑誌「いきいき」江戸ウオーク講師 2010年〜
  • 淑徳大学公開講座講師 2010年〜
  • 新宿歴史博物館講演 2011年、2012年
  • 千代田区シンポジウムパネリスト 2012年
  • 三越 日本橋街大學講師 2014年〜

■ブログ
http://ameblo.jp/edojyo/
■フェイスブック
http://www.facebook.com/ryo.kuroda.96

この記事をシェアする