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No.10 高輪・二本榎の細道

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No.10 高輪・二本榎の細道 狭隘階段と墓地の細道 長さ 340メートル 最狭幅 90センチメートル 歴史度 ★★★     狭隘度 ★★★★   魅力度 ★★★★★

No.10 高輪・二本榎の細道
狭隘階段と墓地の細道
長さ 340メートル
最狭幅 90センチメートル
歴史度 ★★★       
狭隘度 ★★★★    
魅力度 ★★★★★

 二本榎とは、高輪の一角にある地名である。田町と品川を結ぶ高台の途中にあるが、この高台下の海岸に沿って江戸時代に東海道が開かれる以前、この高台を通る道が東海道だった時期がある。札の辻からすぐ上がった坂には聖坂の名があり、平安時代の更科日記に出てくる竹芝寺はこの上にあったと言われる。

 二本榎あたりには道程をあらわす一里塚のようなものがあったという。一里塚の脇には榎の木が両側にあったらしく、それが地名の起こりになった。今も高台の上の古代東海道が、海側の江戸期東海道と桜田通を結ぶ通りと交差する交通上重要な場所になっている。その交差点の角にはモダンな塔のある高輪消防署二本榎分署があり、頼めば中の案内やクラシック消防車の見学ができる。

 今回の細道は、その交差点から古代東海道を北に進み、承教寺というお寺の向かいあたりに入口がある。

細道入口は広く見えるが、実は道の部分は極めて狭い

細道入口は広く見えるが、実は道の部分は極めて狭い

右側がビル前の駐車場になっているので開けた入り口だが、すぐに人一人が歩いたらすれ違えないくらい狭くなる。下り坂の坂道が傾斜を増し、階段になっていくと、下に向かって急階段が続いていくのが見える。谷底を見下ろすような感じだ、そちらへ歩を進める。

あっというまの狭小な下り坂に

あっというまの狭小な下り坂に

 ところがである。
 突然右側に急な登り階段が現れるではないか。

突然右に階段が現れ不意を突かれる。急いで下っていると気がつかないかもしれない

突然右に階段が現れ不意を突かれる。急いで下っていると気がつかないかもしれない

その階段の少し下にも右に通り抜けできそうな階段があるが、さすがにここは人の庭先

その階段の少し下にも右に通り抜けできそうな階段があるが、さすがにここは人の庭先

急な上に階段の上がちょうど身長ぐらいで見通せない。ここは登っていいの?などとも感じるが迷ったらまず登ろう。

 すると両側をアパートに挟まれた道になり、正面も古びたアパートだ。左に折れる。また突き当たりを右に進むが両側はまるで昭和戦前のような街並み。高級住宅地高輪の一角にもこんなところがあるのだ、と感じる。

登って進むと現れるのは昭和レトロな街並み

登って進むと現れるのは昭和レトロな街並み

 道はまたT字路に突き当たるので、今度は左の階段を降りる。正面に巨大高層マンションを見上げる形で降りる。

高層マンションとの対比をかみしめながら階段を下る

高層マンションとの対比をかみしめながら階段を下る

そのコントラストにクラクラする。下るとそこは近代的な歩道付きの幅広の道。しかしおそらく目の前の高層マンションを作る際に整備されたのだろう。江戸時代の地図で見るとここは川だ。

 降りてすぐ左に進むと、左側には真新しい一戸建ての住宅が並ぶが、建物のすき間から、先ほど歩いた道端に並んでいたレトロ住宅が急傾斜地の上に見える。本来は川沿いの崖地なのだ。道の先には鬱蒼とした木々が立ちふさがり行き止まりに見えるが、目前まで進むと左に道がある。

正面は行き止まりに見えるが墓地の入口だ

正面は行き止まりに見えるが墓地の入口だ

右は大きなイチョウの木だ。左に行くと右側に大きな墓地の入口がある。

 墓地に入らず正面見ると、急な階段が連なっている。これが実は最初に下ってきた坂の下になる。

入って左を見ると、最初に下った階段道がずっと奥まで見える

入って左を見ると、最初に下った階段道がずっと奥まで見える

階段は登らず、右手の墓地に入って行く。墓地とはいえオープンな道になっており、一休みできるベンチもあるもある。

 しかしビルに囲まれた一角の内側に、このような墓地が隠れているとは驚きだ。しかも墓地内の一角にはアパートらしきものまである。

墓地内の道を進んで振り返る。アパートは人が住んでいるのか?

墓地内の道を進んで振り返る。アパートは人が住んでいるのか?

 実はこの辺りは、江戸時代まではお寺ばかりが密集する都内でも有数の寺町だった。というか今でも寺町である。

 表通りからはわからないが、道に面したビルの内側には広大な墓地があちこちにある。これは江戸時代から寺の門前や周囲は門前町として町屋が立ち並ぶことが多く、それが現代になってビルとなり、中の墓地や寺を見えにくくしているためだ。歩いている途中に見える高層マンションの多くも、元は寺だった。

 さて墓地の中のきれいに整備された歩道を進むと左側に登り階段がある。手すりや踊り場にベンチもある。取材した時期は藤棚が美しかった。

墓地内の藤棚に藤が咲いていた

墓地内の藤棚に藤が咲いていた

まもなく坂が終わると左手はお寺。いつ行っても墓地案内中ののぼりが立っている。

墓地内の藤棚に藤が咲いていた

墓地内の藤棚に藤が咲いていた

霊園の入り口を出てルートは終わりだが、先ほどの狭隘階段通路をもう一度歩き通して見るのもおもしろいと思う。変化に富んだ、歩く楽しさに満ちた細道だ。

■細道を実際に散歩した動画です。
※黒田さんのナレーション付き!

細道とは
 ここで紹介する細道は、私・黒田涼の独断で選んだものだが、おおまかな定義は頭にある。
まず、表通りから見えにくく、歩く楽しみと驚きのある狭い道が条件。
自動車は通行できないが、公道もしくは近隣の生活道路として機能していること。
歴史が古く、曲がりくねってアップダウンがあればなおよい。

■著者紹介
黒田 涼(くろだ・りょう)

  • 作家・江戸歩き案内人
  • 大手新聞社にて記者を16年務めるなど編集関係の仕事に携わったのち、2011年に作家として独立。現代の東京に残る江戸の痕跡を探し出すおもしろさに目覚め、江戸歩き案内人として各種ガイドツアー講師などの活動も行っている。江戸と言われる範囲をのべ2000キロ歩いて探索。江戸の街の構造、江戸城はもちろん、大名屋敷、寺社、街の変遷などに詳しい。
  • 各種講座や講演講師、NHKはじめテレビ・ラジオ、新聞、雑誌などの媒体露出多数。「江戸城天守を再建する会」参事 専門委員。

■著書
※各書籍名はAmazon.co.jpへリンクされています

■講師歴

  • 「江戸城天守を再建する会」江戸ウオーク講師 2010年〜
  • 雑誌「いきいき」江戸ウオーク講師 2010年〜
  • 淑徳大学公開講座講師 2010年〜
  • 新宿歴史博物館講演 2011年、2012年
  • 千代田区シンポジウムパネリスト 2012年
  • 三越 日本橋街大學講師 2014年〜

■ブログ
http://ameblo.jp/edojyo/
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